ゲーセンの「バンダイナムコ」と「イオンファンタジー」回復力に差 その要因は

alt
写真はイメージです

アミューズメント施設(ゲームセンターなどの娯楽施設)を運営するバンダイナムコホールディングス<7832>(アミューズメント事業)と、イオンファンタジー<4343>の大手2社の間で業績回復力に差が表れてきた。

両社はともにコロナ禍で赤字に陥ったが、バンダイナムコが2023年3月期に、コロナ禍の影響のなかった2019年3月期の実績を上回ったのをはじめ、2024年3月期の第1四半期も22.7%の増収(アミューズメント事業部門)、49.4%の増益(同)と順調な滑り出しとなっている。

これに対し、イオンファンタジーは2019年2月期の実績を売上高、営業利益ともに上回るのは2025年2月期以降になる見込みで、回復が本格化する2024年2月期も第1四半期が16.4%の増収ながら 6400万円の赤字となるなど、今一つの状況だ。

コロナ禍越えに早くて2年の差がつく両社の違いは何なのか。最新の決算を見てみると。

上々の滑り出し

バンダイナムコは大人向けの玩具や映像ソフトなどを手がける、売上高が1兆円に迫るエンタテイメント企業で、アミューズメント事業は全体の10%ほどを占める。

コロナ禍の影響で2020年3月期、2021年3月期は2期連続の部門赤字に陥ったが、2022年3月期に黒字転換し、2023年3月期のアミューズメント事業の売上高は1046億200万円(前年度比27.0%増)、部門利益は60億3800万円(同49.0%増)と、2019年3月期の実績(売上高1014億9300万円、部門利益42億6400万円)を上回った。

国内アミューズメント施設の既存店売上高が14.9%増加したのに加え、「バンダイナムコ Cross Store」や「ガシャポンのデパート」などのグループの商品・サービスと連携した施設展開を積極的に行ったことや、新製品の「CLENA3」などの業務用ゲーム機の販売も好調だったことで大幅な増収増益を実現した。

2024年3月期第1四半期もこの流れは変わらず、売上高は282億4000万円(前年同期比22.7%増)、部門利益は31億5700万円(前年同期比49.4%増)と2ケタの増収増益となった.

振るわない中国事業

一方のイオンファンタジーもコロナ禍の影響で、2021年2月期、2022年2月期に営業赤字に陥っていたが、2023年2月期に黒字転換。2024年2月期は売上高862億円(前年度比18.6%増)、営業利益40億円(同4.7倍)と増収増益を見込む。

それでも2019年2月期の売上高742億4300万円、営業利益46億5100万円の実績を上回るのは売上高だけで、営業利益はあと一歩及ばない。

2023年2月期の状況を見ると、国内事業の売上高は588億2400万円(前年度比16.7%増)、営業利益は24億200万円の黒字(前年度は16億円の赤字)と回復傾向を示している。

半面、中国事業で売上高が前年度より37.1%減少し48億5800万円に留まったうえ、営業損益は27億8200万円の赤字となり、前年度(12億3000万円の赤字)よりも赤字幅が拡大している。

この傾向が2024年2月期第1四半期も続いており、国内は10.2%の増収、4.6倍の営業増益となったものの、中国事業では回復の足取りが重く、84.9%の増収となり売り上げに回復の兆しが見られたが、営業損益は5億5800万円の赤字(前年同期は7億200万円の赤字)を余儀なくされた。

今後の成長はM&Aも

こうした状況を踏まえると両社の回復力の違いは中国事業にあるといってよさそうだ。さらにイオンファンタジーはイオンモールを中心に出店しており、他のアミューズメント企業の買収なども行っていない。これに対しバンダイナムコは出店先に制限はなく、これまでに多くのM&Aを手がけている。

コロナ禍からの回復は中国事業の不振が差となって表れたが、今後の成長については出店やM&Aも影響してきそうだ。

関連記事はこちら
バンダイナムコホールディングスのM&Aデータベース

文:M&A Online