【オークファン】ビッグデータカンパニーを目指した戦略投資の行方はいかに?

alt
画像はイメージです。

ヤフオク・楽天・amazonの商品を
比較・検討できるオークファン

 オークファン<3674>は、現・代表取締役の武永修一氏が2000年に個人で開業したオークション売買事業からスタートし、01年オークション統計ページの運営を開始した。

 現在、国内最大級のショッピング・オークション一括検索・比較サイト「オークファン(aucfan.com)」を運営し、13年4月には東証マザーズ市場に上場、今期9期目の企業である。直近の業績は売上高10億600万円、営業利益4億600万円(平成26年9月期)。

 同社が保有するショッピング・オークションの商品および価格情報のデータは、300億件以上、月間の訪問者数は1500万人を超え、ページビュー(PV)は、1億PV以上に上る(オークファン公式HPより抜粋)。

中古品売買事業モデルの加速
積極的なM&A戦略に成功

 また、同社の掲げるミッションは「世界中のあらゆる人が、あらゆる場所で、あらゆるモノを売り買いできる時代を創る」だ。オークファンは直近の2、3年で3社を買収、1社から事業譲渡を受けており、近年M&Aを積極的に実施している企業である。

 13年9月にマーケットエンタープライズ社からフリーマーケットの全国開催情報サイト「フリーマーケット楽市楽座」事業を8500万円で事業買収。オークファンは自社のユーザーがオークションの買い手から売り手に成長する独自のモデルを形成しており、フリーマーケットという場を通じて、より身近に中古品の売り買いを感じてもらうことにより、その事業モデルを加速させている。売上高は1億2200万円、経常利益3200万円(ともに平成25年9月期)(参考:オークファンの平成25年9月期売上高7億5100万円)。

 14年10月にはグランドデザイン&カンパニー(以下GDC社)を100%子会社化。同社はデジタルマーケティング事業を行っており、そのマーケティングのノウハウを活用することにより、自社のデータベースの質と量の拡充を狙った買収であり、買収金額9000万円、子会社化した企業の買収直前期決算は売上高1億3800万円、純資産△6900万円である。

 14年12月に3300万円で買収したマイニングブラウニー社は、企業のネットマーケティングにおいて多数の実績があり、競合価格の調査、ウェブサイト解析技術など大きな相乗効果が見込めるため買収し、同直前期の決算は売上高3300万円、純資産1600万円である。

■オークファンの行った主なM&A

年月 内容
2013.9 マーケットエンタープライズ(売上高1億2200万円)からフリーマーケット楽市楽座事業を8500万円で譲り受け
2014.8 イー・クラシス・コマースから月間流通額3億円のらくらく卸を譲り受け、仕入れモール拡充
2014.10 6.45%出資していたグランドデザイン&カンパニー(売上高1億3500万円)に9000万円を追加出資し株式取得、完全子会社化
2014.12 マイニングブラウニー(売上高3100万円)を3300万円で買収し、サービス統合
2015.3 グランドデザイン&カンパニーが保有するグランドデザイン(80%出資)の株式の17.95%を1億円でリアルワールド、ベクトル、アドウェイズに売却
2015.4 グランドデザイン&カンパニー(100%子会社)を吸収合併
2015.5 NETSEAをディー・エヌ・エーから12億5000万円で買収

売上高3期連続増加
対前年比・営業利益200%

 近年、M&Aを実行している背景には、株式公開時に6億円を調達したほか、好調な業績によって手元資金が潤沢であることが後押ししているといえるだろう。また、15年2月には三井住友銀行などから7億円の借り入れを、6月にはNETSEA買収資金に充当するため12億5000万円の借り入れを行うなど、活発に資金調達を行っている。

(単位:千円)

 買収による積み増しもあり、売上高は3期連続増加し、平成26年9月期営業利益では、対平成24年度比200%増加と好調に推移している。

 同社の収益構造は、インターネットでの情報提供サービスによる有料会員向け課金収入が全体の50%を占め、営業利益率も50%以上確保し高収益構造となっている。

 現金同等物は、平成24年度3億3800万円に対し、平成25年9月期には11億2600万円、前期末で11億4300万円であり、直近2年間で大幅に増加している。

 同社の事業構造では設備投資も少なく、既存事業で手元資金を有効に活用するには限界がある。そのため自社で所有するデータベースをより顧客サービスに結びつけるためのマーケティング・分析技術拡張、先行投資を含め、投資活動としてM&Aを選択していると考えられる。

15年5月の大型M&A
さらに事業拡大を図る目的

 15年5月に買収したNETSEAはソーシャル・メディア事業を手掛けるディー・エヌ・エーが運営していたBtoB(企業間の商取引)マーケットプレイス事業を承継する新設法人である。前期売上10億600万円営業利益4億円のオークファンが、自社の5割以上の実績(同5億2100万円、2億5100万円)を上げているNETSEAを買収した。オークファンの規模としては大型買収といえる。従来のM&Aでは買収価格は1億円以下であったが、今回は12億5000万円を投じている。

 今回実施したM&Aは、それまでの買収とは買収金額、業績が大きく異なり、同社がさらにM&Aによるグルーブ全体の事業拡大を図る目的が見て取れる。(同社ではM&A以外の資本業務提携も買収と同時期に積極的に行っており、13年7月から15年4月現在までに13社へ出資している。)

■オークファンが行った主な資本業務提携

年月 内容
2013.7 サイカの第三者割当増資を引き受け
2014.2 リアルワールドに2440万円を出資し、株式1%を取得、業務・資本提携
2014.3 インドネシアのPT Bukalapak.comに3000万円を出資
2014.7 ベクトルとともにJ・Paymentと戦略的資本業務提携
2014.7 blueへ出資
2014.7 FLASH PARKへ出資
2014.9 マーケットエンタープライズに出資、データAPI提供
2014.10 「タテンポガイド」運営のエターテインメントの第三者割当増資を引き受け、1億2000万円を出資、17.5%を取得
2014.11 アニメ・同人専門のフリーマーケットアプリ「A2mato」開発・運営のセブンバイツへ出資
2014.12 「リノベる」へ出資
2014.12 中古高級ブランド品交換事業ならびにEC運営の米国のMaterial Wrldに出資
2015.3 人事関連サービス運営のあしたチームに出資、業務連携
2015.3 Indotrading.comに150万ドルを出資

<追記>

年月 内容
2016.1 流通・製造業の資産を流動化するアセットリクイデーション事業を運営するリバリュー(売上高7億円)の全株式を取得、子会社化


この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ・M&A Online編集部