アサヒとキリンがコロナ後の新たな成長軌道に 10月にはビールの「値下げ」も

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ビール大手のアサヒグループホールディングス<2502>とキリンホールディングス<2503>の両社がコロナ後の新たな成長軌道に入ったようだ。

キリンは2022年12月期に売上高、営業利益がコロナ前の2019年12月期を上回り、2023年12月期も増収増益を見込む。アサヒはキリンよりも1期前の2021年12月期に2019年12月期の数字を上回り、2022年12月期、2023年12月期と3年連続で増収増益になる見込み。

両社は2022年10月に原材料高を理由に、ビールをはじめとする酒類の値上げに踏み切ったが、数字の上からは消費者に受け入れられたといえそう。加えて2023年10月にはビールの酒税が引き下げられビールの販売価格が下がる見込みで、消費に弾みがつくことが予想される。

さらに2023年5月には新型コロナウイルスが、感染力が2番目に強い2類相当から季節性のインフルエンザなどと同じ感染力が最も弱い5類に移行するため、宴会需要などが盛り返す可能性がある。ビールには追い風が吹いているようだ。

増収増益基調に

キリンは2022年12月期に売上高が3期ぶりに増加に転じ、コロナ禍前の2019年12月期の売上高を超えた。営業利益も増益に転じコロナ禍前を上回った。

増収営業増益の傾向は今期も続く見込みで、2023年12月期の売上高は6.3%増の2兆1150億円を、営業利益は45.7%増の1690億円と増収大幅増益を予想する。

【キリンホールディングスの業績推移】

アサヒは一足早く2021年12月期に、売上高、営業利益ともにコロナ禍前の2019年12月期の実績を超えた。

キリン同様に増収営業増益の傾向は続く見込みで、2023年12月期の売上高は7.1%増の2兆6900億円、営業利益は4.6%増の2270億円を予想する。

【アサヒグループホールディングスの業績推移】

ビール系飲料はビールのほかに発泡酒、第3のビールなどの新ジャンルの3種類がある。現在はそれぞれ税率が異なるが段階的に酒税が改正され2026年10月に税率が一本化される予定で、ビールは2026年10月に再度税率が引き下げられることになっている。逆に新ジャンルは税率が引き上げられるが、利益率の高いビールが伸びることで業績にはプラスに働く。

一方、新型コロナウイルスが2類相当から5類に移行すると、飲食店に対する営業時間短縮などの要請がなくなり、宴会などの需要に対応できるようなる。また日本入国時の検疫も原則的に無くなるため、外国人旅行者の訪日が容易になる。

2023年12月期の業績予想にはビールの酒税の引き下げや、新型コロナウイルスの5類への移行などの環境変化は当然盛り込まれているはず。予想通りの着地となるのか、それとも追い風に乗って数字を伸ばすのか。現状を見る限り少なくとも増収増益の予想が”泡”と消えることはなさそうだ。

文:M&A Online編集部