前回紹介した1株に多数の議決権を付与する「デュアルクラス」は、アメリカ西海岸、シリコンバレー流の反逆精神、カウンターカルチャー精神の表れであり、経験を積んだオトナの経営者は眉を顰めるだけのキワモノなのだろうか。

投資ファンド御三家」も実質デュアルクラス構造

実はそうではない。前回のグラフでも示したように、非テック系企業においてもまた、デュアルクラス構造の採用は急速に進んでいる。身近な銘柄としてはナイキ、マンチェスターユナイテッドなどもデュアルクラスを採用している企業だ。

中でも筆者が面白いと思うのは、「米国株主資本主義」のアイコンともいえる3大投資ファンドもまた、実質的にデュアルクラスと同様の効果を持つ仕組みを採用して上場している点だ。

・KKR&Co. Inc.(NYSE:KKR、以下KKR)
・The Blackstone Group Inc. (NYSE:BX、以下ブラックストーン ) 
・Carlyle Group L.P. (NasdaqGS:CG、以下カーライル)

日本でも知名度の高いこの3つの投資ファンドは、少なくとも上場した時点において、いわゆるLP(リミテッドパートナーシップ)の形態を採用していたため、通常の株式会社の上場とはスキームが根本的に異なる。

しかし、近年この御三家を含む多くの上場投資ファンド運営会社は、税務上の観点などを総合的に勘案し、通常の株式会社(いわゆるC-corporation)への組織変更を行っている。

ところが、この組織変更過程においても、KKRとブラックストーンの2社は、創業者が実質的な議決権の多くを確保するためのスキームを崩していない。一方、カーライルは完全な1株1議決権への移行を試みているようだ。

KKRとブラックストーンの議決権構成に関する参考資料
 Blackstone Form 8-K Blackstone Group IncCurrent report
 https://sec.report/Document/13...

 KKR Proxy Statement Pursuant to Section 14(a) of theSecurities Exchange Act of 1934
 https://www.sec.gov/Archives/e...

投資ファンドは株主権を存分に行使することでリターンを最大化

これらの投資ファンドは、いうまでもなく最も厳密に株主権を行使してリターンの最大化を図る、究極のアクティブ投資家である。日本でも今、ブラックストーンがユニゾホールディングス<3258>をターゲットとしたTOB株式公開買い付け)を表明し話題となっている。彼らの投資行動の根底を支えるのは「会社は株主のものである」という会社法の基本原則だ。