デンマークでゼロ、日本でも激減 銀行強盗が激減した理由とは

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「銀行強盗」は過去のものになったのか?(写真はイメージ)

デンマークで銀行強盗が「絶滅」した。金融機関の業界団体「ファイナンス・デンマーク」によると、2000年には221件あった銀行強盗が、カメラでの監視強化や警報システムの改善、警察との協力態勢の拡充などで「割りに合わない」犯罪となり、減少傾向が続いていたという。2021年に1件まで減り、2022年にはついに0件となった。

キャッシュレス化が銀行強盗を「絶滅」させた

一方で金融サービスのIT化も、銀行強盗の「絶滅」に一役買っている。キャッシュレス化が進んだ結果、銀行での現金の授受が激減。とりわけスマートフォンの普及により、クレジットカード経由や決済アプリでの支払いが増えた結果、2017年からの6年間で現金の引出額は4分の1にまで減っている。

預金や引き出し業務の窓口を置く銀行支店は全国約800店舗の40分の1に当たる約20店舗にすぎず、現金の大半はATM(現金預払機)で取引されているという。これを受けて銀行強盗は窓口ではなくATMを狙うようになり、2016年にはATMで顧客を狙った強盗が18回も発生したが、金融機関が防犯対策を強化した結果、こちらも2022年には発生しなかった。

では、日本ではどうか?デンマークはキャッシュレス化が進んでおり、2020年時点で国内流通する現金総額はGDPの約3%に過ぎない。一方、日本は同年に約20%と、デンマークどころかEU全体の12.5%、米国の9%よりも高い。

日本でも銀行強盗は激減したが…

それでも日本での銀行強盗件数は減少傾向にある。警察庁によると、ITバブルの崩壊で景気が急速に落ち込んだ2001年の229件をピークに減少。日本防災通信協会によれば、2021年に9件とついに1桁に。コロナ禍が3年目の2022年には6月までの半年間で10件と前年通期を上回っているが、それでも低いレベルであることは間違いない。

日本では現金需要が旺盛とはいえ、デンマーク同様にIT化により銀行窓口での現金受け渡しが減少したのに加えて、預貯金取扱店舗数が2001年から2021年までの20年間で都市銀行など大手銀行が26.2%(845店舗)減の2372店舗、地方銀行が13.2%(1591店舗)減の1万427店舗、信用金庫が16.0%(1360店舗)減の7120店舗と減少するなど、銀行強盗の現場となる店舗も減っている(財務総合政策研究所調べ)。

併せて警察による強盗事件の検挙率も2005年から上昇し、2021年は前年比2.1ポイント上昇の99.3%と高水準に。2021年に国内金融機関で発生した9件の強盗事件では、すべて犯人が検挙された。金融機関に関連する犯罪では、高齢者にATMで送金や現金の引き渡しへ誘導する「オレオレ詐欺」などの特殊詐欺や、ネットで課金へ誘導するフィッシング詐欺といった知能犯に移行している。

IT化やキャッシュレス化が進み、1回のクリックで大金がだまし取られるケースも増えている。犯罪者のターゲットが、金融機関から一般市民へ移っているのだ。銀行強盗が減ったからと言って、決して油断はできない。むしろ一般市民にとっては犯罪に巻き込まれるリスクが高まったと警戒すべきだろう。

文:M&A Online編集部

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