【バリューゴルフ】4年で売り上げ倍増へ カギ握るのはM&A

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写真はイメージです(増える若いゴルファー)

積極的なM&Aによる成長戦略を描いているバリューゴルフ<3931>が活動を本格化する環境が整ってきた。

コロナ禍の影響で2021年1月期は売り上げが大きく落ち込み、当期損益が赤字に陥っていたが、2022年1月期は反転に転じ、2023年1月期には唯一赤字だったトラベル事業も黒字化できそうな状況になったためだ。

同社は2018年8月に産経旅行(東京都中央区)を子会社化して以来、4年半ほどM&Aを実施していない。2027年1月期には100億円の売上高を目指しており、4年ほどの間に売上高を現在(2023年1月期の売上高は47億円の予想)の2倍強に増やさなければならい。産経旅行に次ぐM&Aはそう先ではなさそうだ。

医療分野での出版サービス事業にも進出

バリューゴルフは創業者で現社長の水口通夫氏が、2003年1月にブライダル情報誌の広告制作受託業務や不動産広告コンサルティング業務を手がけるスリーベースを設立したのが始まり。

スリーベースは2003年10月にゴルファー向けフリーペーパー「月刊バリューゴルフ 関東版」を創刊。バリューゴルフは2004年2月に設立され、この「月刊バリューゴルフ 関東版」の制作、発行業務をスリーベースから譲り受け事業をスタートした。2008年1月にはスリーベースを吸収合併し、一つの会社となっている。

その後2008年にJCBカード会員向けにゴルフサービスを提供することでジェーシービーと業務提携し、2009年にはゴルフレッスンサービス「バリューゴルフレッスン」の提供を開始。さらに2010年にはゴルフ場向け1人予約サービス「1人予約ランド」を投入したのに加え、特定のゴルフ場で利用できる格安プレー券を販売するEC(電子商取引)サイトを開設するなど業容を拡大した。

2012年には広告メディア制作事業の拡大を目的に子会社を設立、求人広告制作受託業務を始めたほか、2013年にはバリューメディカルの全株式を取得し、医療分野での出版サービス事業に乗り出すなど、ビジネスの幅を広げていった。2016年には東京証券取引所マザーズへの上場を果たした。

100億円のうち15億円分はM&Aで

近年の主なM&Aは、2016年から2018年までの2年間に実施した4件がある。皮切りとなったのは、2016年にゴルフ用品やスポーツ用品の販売を手がけるジープ(千葉県浦安市)の全株式を取得し子会社化した案件だ。

当時ジープは「ジーパーズゴルフショップ」を運営し、10万人の会員を保有していた。バリューゴルフは会員向けにゴルフ用品を販売する新たなサービスを開始し、登録会員の囲い込みを狙った。

次いで実施したのが、破産したゴルフスタジアムが保有するインドア・ゴルフスクール「e-golf stadium 大崎」(東京都品川区)の運営事業を2017年に取得した案件。バリューゴルフはゴルフ場向けの予約システムサービスやゴルフ関連情報誌の発行などを手がけており、これらサービスとの相乗効果創出を見込んだ。

2018年には2月と8月に立て続けに旅行関連の企業を手中に収め、トラベル事業を新たな事業の柱に据えた。

まずは日本旅行協会(東京都台東区)の全株式を取得し、ゴルフ事業に関連したトラベルサービスの内製化や周辺サービスへの事業展開に乗り出した。その半年後に産経旅行を買収した。

産経旅行は当時、年間4万人以上の在日外国人向け旅行や出張手配などを手がけており、バリューゴルフでは需要の拡大が見込まれていたインバウンド(訪日外国人旅行客)需要の取り込みと、メディカルツーリズムなどの新事業領域の開拓に取り組んだ。

このあと現在(2023年2月)に至るまでM&Aはなく、2027年1月期までに新たなM&Aを実施する計画で、目標とする売上高100億円のうち15億円分をM&Aで稼ぎ出すという。

「既存事業の領域拡大や垂直統合のためのM&A」「事業領域拡大のためのM&A」「DX(デジタルトランスフォーメーション)の強化を推進するためのM&A」の三つを具体的なターゲットに掲げる。最初に実現するのはどの分野だろうか。

大幅な増益が引き金に

M&A実施のポイントとなる業績はどうか。直近の2023年1月期第3四半期の業績を見てみると、同社が手がける「ゴルフ事業」「トラベル事業」「その他事業」はいずれも営業黒字を達成した。

ゴルフ事業では前年同期比で9.3%の増益、その他事業も金額は多くないものの、伸び率は96.3%と大きい。そして唯一赤字だったトラベル事業もわずかではあるが黒字となった。

2023年1月期通期でも、この傾向は変わらず、営業利益3億円(前年度比39.5%増)、経常利益2億9000万円(同53.4%増)、当期利益2億円(同61.5%増)といずれも大幅な増益を見込む。

ゴルフは新型コロナウイルス感染の可能性の低いスポーツとして若者の間で人気となっており、同社のゴルフ事業でも個人を中心とした少人数での利用のほか、大人数を集客するイベント企画やコンペなどの団体客の予約が増加傾向にある。

トラベル事業も日本政府が2022年10月から入国規制を緩和したことから訪日外国人旅行者数が増加に転じており、同社もこれに合わせ積極的に事業を展開している。

主力のゴルフ事業とトラベル事業の先行きに期待が持てることから、来期以降の業績も堅調に推移することが見込まれる。こうした業績の先行き見通しは、M&Aの実施の引き金になりそうだ。

文:M&A Online編集部