【UUUM】ユーチューバーらとともに新しいビジネスの創出に挑戦

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写真はイメージです

日本トップクラスのユーチューバーであるヒカキンさんがファウンダー兼最高顧問を務めるUUUM<3990>が、新しいビジネス展開に乗り出した。

同社はこれまでマネジメントやサポートの対象となるユーチューバーら(専属クリエイター)を増やすことで事業を拡大してきたが、今後は専属クリエイター(約300組)を半数に絞り込み、同社とクリエイターが協力して新しいビジネスを創り出していく「インフルエンサー・ギャラクシー事業(共創事業)」に軸足を移す。

これによって大幅な増益を目指す計画で、すでに事業を推進するためのキーとなる企業との提携や合併などを実施しており、事業の進展に伴いさらなるM&Aも見込まれる。

クリエイターのマネジメント会社として成長してきた同社が、事業のあり方が大きく変わってしまうインフルエンサー・ギャラクシー事業に舵を切るのはなぜなのだろうか。

ヒカキンさんと出会い起業

UUUMは鎌田和樹社長がヒカキンさんとの出会いをきっかけに、ユーチューバーの動画を利用したオンライン販売事業を手がける企業としてON SALEを2013年に立ち上げたのが始まり。

同年に社名をuuumに変更し、ユーチューバーら専門のマネジメントプロダクション事業を開始。2014年に社名を現在のUUUMに変更した。翌年の2017年に東京証券取引所マザーズに株式を上場したあと、資本、業務提携、吸収合併、事業譲受などを相次いで実施。

2018年には中華圏を中心にクリエイター支援事業などを手がけるカプセルジャパン(東京都新宿区)と資本、業務提携し、コンテンツ制作事業などを手がけるチョコレイト(東京都渋谷区)、ソーシャルメディアマーケティングに強みを持つガーブー(東京都渋谷区)とは資本、業務委託契約を締結。さらにインスタグラム特化型インフルエンサーマーケティング事業を手がけるレモネード(東京都港区)を吸収合併した。

2019年にもクリエイターとファンの交流を支援する事業などを展開するピースオブケイク(東京都港区、現note)と資本、業務提携し、2020年には吉本興業(大阪市)からデジタル著作権管理やタイアップ広告営業などを展開するマルチチャンネルネットワーク運営権を取得。2021年もソフトウエア開発のAnyMind Group(東京都港区)と業務提携した。

こうした提携や合併、事業譲受などを経て、徐々に専属クリエイターを増やし事業規模を拡大。設立から7年後の2020年5月期には売上高が200億円を突破した。

その同社が、専属クリエイターが半減するインフルエンサー・ギャラクシー事業に方向転換する背景には、クリエイターを取り巻く環境の大きな変化がある。

【UUUMの沿革】

2013年 東京都渋谷区でON SALEを設立
2013年 uuumに社名を変更。クリエイター専門のマネジメントプロダクション事業を開始
2014年 UUUMに社名を変更
2017年 東京証券取引所マザーズに株式を上場
2018年 カプセルジャパンと資本、業務提携
2018年 チョコレイトと資本、業務委託契約を締結
2018年 レモネードと吸収合併契約を締結
2018年 ガーブーと資本、業務委託契約を締結
2019年 ピースオブケイク(現note株式会社)と資本、業務提携
2020年 吉本興業のマルチチャンネルネットワーク運営権を取得
2021年 ソフトウエア開発のAnyMind Groupと業務提携

ユーチューバーの急増が引き金に

UUUMが事業を始めた2013年ごろは、ユーチューバーらクリエイターの社会的な認知度は低く、活動を拡大するにはいろんな問題があった。このためクリエイターを対象に、活動や財務面での支援を行ってきた結果、徐々にクリエイターの認知度が高まり、活動の幅が広がってきた。

ところがコロナ禍の中、ユーチューバーが急激に増えたために、UUUMやユーチューバーに入るアドセンス(ユーチューブ上で発生する広告収入)が減少してきたうえに、個人がインフルエンサー(人の考えや行動に大きな影響を与える人物)として自らのメディアで発信するようになり、アドセンス以外のビジネスも急成長してきた。

こうした環境の変化を踏まえ、専属クリエイターを増やし、専属クリエイターに対して提供するサポートサービスで収益を上げてきたビジネスモデルを変更することにしたわけだ。

同社では今後マネジメントする対象を「ビジネスを共創できるポテンシャルが高いクリエイター」と定義するという。

その共創するビジネスとして、六甲山観光(神戸市)が運営するアスレチック施設「六甲山アスレチックパーク GREENIA(グリーニア)」で、ユーチューバー集団のフィッシャーズがアスレチック施設を監修した事例を上げる。

同社では「これまで蓄積してきたマネジメントリソースをクリエイターとのビジネス開発リソースに変換して新しいビジネスを共創する」としており、フィッシャーズのような取り組みを強化する計画だ。

その活動に絡んでくるのが、2018年に吸収合併したレモネードと、2021年に業務提携したAnyMind Groupの2社だ。

着々と進む事業転換

UUUMが作成したインフルエンサー・ギャラクシー事業のイメージ図にはレモネードとAnyMindがしっかりと明記されている。

レモネードはインフルエンサーとマーケターをマッチングさせるプラットフォームを提供しており、UUUMはこのプラットフォームを活用して、所属のインフルエンサーとの共創に取り組む。

もう一つのAnyMindは、インフルエンサーやクリエイターなどの個⼈のほか、メディアなどの企業向けに、EC(電子商取引)構築やマーケティング、物流などを⽀援するプラットフォームを提供している。

すでに、提携の一環としてUUUM専属クリエイターである「青木歌音」さんがプロデュースするD2C(自社のECサイトで製品を直接顧客に販売する仕組み)アパレルブランド「cyasha(キャシャ)」でワンピースやブラウス販売しているほか、専属クリエイター「釣りよかでしょう。」がプロデュースするD2Cアウトドアブランド「ARAKA(アラカ)」でも、ルアーなどを販売している。

同社の2022年5月期の売上高は225億-245億円の見込み。前年度が244億8800万円だったため、高い数値でもほぼ横ばいで、低い数値だと8%ほどの減収となる。利益も同様の傾向で、営業利益(8億-9億3000万円)、経常利益(8億1500万円-9億4500万円)、当期利益(4億9000万円-5億7000万円)はいずれも低い数値では減益が避けられない。

予想に幅があるのは、クリエイターらが新たに開発した商品などの売れ行きの予想が難しいためで、インフルエンサー・ギャラクシー事業への意向が着々と進んでいることがうかがえる。

事業のあり方を大きく変えようとする試みは「吉」とでるだろうか。

【UUUMの業績推移】単位:億円、2022年5月期は予想

文:M&A Online編集部