【リソルホールディングス】ゴルフ事業にフォローの風 ホテル事業は立て直しが急務

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ゴルフ場内に建設したフェアウェイフロントヴィラ(広島県竹原市の瀬戸内ゴルフリゾート、同社ニュースリリースより)


ホテルやゴルフ場の運営を手がけるリソルホールディングス<5261>が、2年ぶりにゴルフ場をM&Aすることになった。

同社は2023年2月~3月に傘下企業を通じて、東急不動産からゴルフ場運営のTLCゴルフリゾート(東京都渋谷区)、関西カントリー(京都府亀岡市)、三木よかわカントリー(兵庫県三木市)の3社を買収する。

保有するゴルフ場を増やし、長期的に安定した収益基盤を構築するのが狙いで、当面この方針を変更する理由は見当たらないため、今後もゴルフ関連のM&Aが続くことになりそうだ。

相次ぐゴルフ場の買収

リソルホールディングスが初めてゴルフ関連の事業を始めたのは1987年にさかのぼる。リゾート事業部を新設し、ゴルフ会員権の販売を始めたのがそれで、翌年の1988年には、ミサワリゾートに社名を変更し、ホテルやゴルフ関連の事業を拡大していった。

ゴルフ場の運営に乗り出したのは、運営受託業務を始めた1994年。その後2005年には、三井不動産と資本提携し、社名をリゾートソリューションに変更。翌2006年にはコナミ(現・コナミグループ)と資本提携し、ホテルとゴルフ場の運営事業を一段と拡充した。

ゴルフ場の運営に関しては2001年に北武蔵カントリークラブを吸収合併したあと、2005年に那須ハイランドゴルフと、大熱海国際ゴルフ(2015年6月運営終了)の株式を取得。さらに2007年に、瀬戸内ゴルフリゾート、2011年に西東京ゴルフ倶楽部(現・リソル)、南栃木ゴルフ倶楽部の株式を取得。同年には唐津ゴルフ倶楽部の運営を受託した。

その後もゴルフ事業の拡充に取り組み、2012年に1件、2013年に1件、2014年に4件、2015年に2件、2018年に1件のゴルフ場の取得や運営の受託を実現した。直近は経営破綻した亀山湖カントリークラブ(現・木更津東カントリークラブ)のスポンサーとなり、2021年に運営を開始した。

今回の東急不動産から買収する3社はこれに次ぐもので、取得対象のゴルフ場は「有田東急ゴルフクラブ」(和歌山県有田川町)、「望月東急ゴルフクラブ」(長野県佐久市)、「関西カントリークラブ」(京都府亀岡市)、「三木よかわカントリークラブ」(兵庫県三木市)の4コースとなる。

コロナ禍の中、感染リスクの低いスポーツとして若い人たちを中心にゴルフへの関心が高まっており、30年近くに及ぶゴルフ事業には、今フォローの風が吹いていると言えそうだ。

リソルホールディングスの沿革と主なM&A

出来事
1931 日本エタニットパイプを設立
1949 東京証券取引所1部上場
1987 リゾート事業部を新設し、ゴルフ会員権の販売を開始
1988 プリシア与論に資本参加
1988 ミサワリゾートに社名を変更
1994 ゴルフ場の運営受託業務を開始
2001 北武蔵カントリークラブを吸収合併
2003 エム・アール・エス(現・リソル施設管理)の株式を取得
2003 住宅事業をミサワホーム群馬に営業譲渡
2005 三井不動産と資本提携し、運営受託事業などの拡大に向けた事業で協力
2005 那須ハイランドゴルフの株式を取得(2015年6月運営終了)
2005 大熱海国際ゴルフの株式を取得
2005 リゾートソリューションに社名を変更
2006 コナミ(現・コナミグループ)と資本、業務提携
2007 瀬戸内ゴルフリゾートの株式を取得
2011 西東京ゴルフ倶楽部(現・リソル)の株式を取得
2011 「日本土地改良」(現・リソル生命の森)の更生手続が早期終結
2011 唐津ゴルフ倶楽部の運営を受託
2011 福島グリーンシステムの株式を取得
2011 南栃木ゴルフ倶楽部の株式を取得
2012 岡崎ゴルフ倶楽部の株式を取得(2020年3月運営終了)
2013 備前ゴルフクラブの株式を取得(2017年12月運営終了)
2014 益子ゴルフプロパティーズの株式を取得
2014 益子カントリー倶楽部の株式を取得
2014 ホテルリソルトリニティ金沢を取得
2014 高松カントリー倶楽部の株式を取得(2018年3月運営終了)
2014 伊香保ゴルフ倶楽部岡崎城コース(現・伊香保ゴルフ倶楽部)の運営を受託
2015 兵庫カンツリー倶楽部の株式を取得(2016年10月運営終了)
2015 裾野カンツリー倶楽部の株式を取得
2016 リソルホールディングスに社名を変更
2018 中京テレビ放送と中京ゴルフ倶楽部石野コースの共同経営を開始
2021 木更津東カントリークラブ(旧亀山湖カントリークラブ)の運営を開始
2022 東急不動産傘下のゴルフ場運営会社3社を子会社化

そのゴルフ事業の業績は順調だ。

ゴルフ場内の太陽光発電所の売却が稼ぎ頭に

集客は好調で、客単価もアップしたため、2022年3月期のゴルフ事業の売上高は47億2400万円と、前年度より31.1%もの増収となった。経常利益は5億6100万円で、こちらは同4.9倍もの増益を達成した。

コロナ禍にあった前年度(2021年3月期)は、ゴルフ需要の高まりはあったものの、コンペや宴会などが振るわず、ゴルフ事業の売上高は36億400万円で、前年度より24.6%の減収となっていた。これに伴い、経常利益も1億1400万円に留まり、57.9%の減益だった。

2022年3月期は様変わりの様相を呈しているわけで、コロナ禍の影響は脱したよう。今後のゴルフ場のM&A状況と相まって、業績を牽引する事業になりそうだ。

ゴルフ事業と関連のある部門が投資再生事業で、同部門では旧ゴルフ場を用地変換し、ゴルフ場敷地内に建設した太陽光発電所の売却などを手がけている。

2022年3月期は旧福島石川カントリークラブ(福島県石川町)のゴルフ場敷地内に開発した福島石川太陽光発電所第二設備(2020年1月から売電)の一部を売却した結果、同分野の売上高は57億3000万円(前年度比20.2%減)、経常利益は21億5000万円 (同38.8%減)となった。

前年度には、太陽光発電所の一部の売却やリゾート施設の売却などがあり売上高、経常利益ともに大きく膨らんだため、2022年3月期は減収減益となったものの、2022年3月期の稼ぎ頭が同事業であったことは間違いない。

【リソルホールディングスの2022年3月期の部門別業績】単位:億円

ホテル事業 ゴルフ事業 リソルの森事業 福利厚生事業 再生エネルギ-事業 投資再生事業
売上高 48.41 47.24 29.4 8.66 17.98 57.3
経常損益 △19.86 5.61 0.57 0.35 6.27 21.5

ホテル事業は赤字

ゴルフ事業と並ぶもう一つのメイン事業であるホテル事業は、コロナ禍の影響が続いている。

期中にコロナ対応として、密を避けたプライベートリゾートの販売や、フェアウェイフロントヴィラ(ゴルフ場のティーグラウンドからグリーンまでの芝生を短く刈りそろえたフェアウェイの目前に建てられた別荘)事業などの拡大に取り組んだほか、ワーケーションなどで貸別荘需要の高まりに対応した、未利用別荘の宿泊施設への転換支援事業などに注力した。

しかし外国人旅行者や国内旅行者、ビジネス需要などの大幅減少をカバ―することができず、ホテル事業の2022年3月期の売上高は48億4100万円と、前年度より59.7%もの減収となり、これに伴って経常損益は19億8600万円の赤字(前年度は17億900万円の赤字)を余儀なくされた。

こうした事業を合わせた全社の2022年3月期の売上高は7%の増収となったものの、営業利益は30%強、経常利益は50%強の減益となった。当期利益は傘下ゴルフ場の合併によって発生した特別利益などの影響で50%強の増益となったが、これがなければ減益は避けられなかったと見られる。

同社では、今期(2023年3月期)の業績予想については、新型コロナウイルスの影響を算定できないため、未定としている。ゴルフ場のM&A状況と、新型コロナに大きな影響を受けるホテル事業をどのように立て直すのかが、今期の業績を占ううえでのポイントとなりそうだ。

【リソルホールディングスの業績推移】単位:億円

2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期
売上高 209.5 206.11 195.34 209.02
営業利益 7.67 4.23
10.52
6.85
経常利益 15.54 10.03 16.73 7.85
当期利益 14.25 1.06 3.1 4.74

文:M&A Online編集部