【ポプラ】M&Aで全国展開を仕掛けた「老舗コンビニ」の転機

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広島に本社を起きながら東京にも進出しているポプラ(東京・四谷)

本拠地の広島から、東京をはじめとする広範囲にコンビニエンスストアをチェーン展開するポプラ<7601>。2021年2月期には4期連続の最終赤字に沈んでいる。2020年9月に事業構造改革を発表し、「ポプラ」などのコンビニ468店舗のうち140店舗を新設した100%子会社へ譲渡し、「ローソン・ポプラ」や「ローソン」にブランド転換中だ。

ローソンとの提携強化で業績回復を加速

広島・岡山・山口の中国地方3県で58店舗が「ローソン・ポプラ」に転換する(同社ホームページより)

ローソンはポプラ子会社の店舗資産などを一部承継し、その対価としてポプラに7億3100万円を支払うと共に、メガフランチャイズの契約金などの名目で同子会社やポプラに8億円を交付する。これに先立つ2017年5月、ローソンはポプラの第三者割当増資を引き受け、持ち株比率を5.01%から18.27%へ引き上げた。

ポプラはローソンの支援を受けて経営再建を進めているが、一筋縄にはいかない。2021年2月期に店舗数は一部地域からの撤退で30店ほど減った。その前の2020年2月期には69店を削減している。その結果、直営比率が下がり、収入が目減り。前期の最終赤字は13億1800万円と、前々期の3億3000万円から悪化した。

ローソンとの提携強化で共同店舗への転換効果や物流費用削減が期待できるものの、共同店舗への改装休業や転換費用などが重くのしかかり、2022年2月期も12億円の最終赤字を見込んでいる。業績安定を実現するには、まだまだ課題がありそうだ。

コンビニとしては、セブンイレブンと「同期」の老舗

ポプラがコンビニに進出したのは1974年。国内最大手セブンイレブンの日本1号店が開店したのと同じ年だ。前身は広島市最大の歓楽街・流山町にあった酒や食料品の卸売店で、スーパーマーケットが閉店している時間帯に営業していたという。そのため当時は「コンビニ」ではなく、「ナイトショップ」の看板を掲げていた。

開店当初は「文房具や玩具、家電製品など注文を受けたものを何でも仕入れ、翌日以降に取りに来てもらって販売する」(目黒俊治社長兼会長)というユニークなサービスも提供していたという。1976年4月に法人化し、同7月には弁当・惣菜事業を手がける子会社の「弁当のポプラ」を設立する。

同子会社のセントラルキッチンから配送された「おかず」に、各店舗のキッチンで炊いたばかりのライスを組み合わせて販売する手法で、他のコンビニやスーパーなどで売られている弁当との差別化に成功した。この弁当がポプラが成長する原動力となった。

1983年10月からフランチャイズ(FC)展開を始め、店舗網の本格的な拡大に乗り出す。それを加速したのがM&Aだ。1992年7月に九州での出店を強化するため、トップマートを吸収合併した。1998年2月に大手百貨店の髙島屋から、「生活彩家」を展開するハイ・リテイル・システムを買収。同4月には航空測量大手のパスコから、「ジャストスポット」を運営するパスコリテールを買収し、「関東ポプラ」に社名変更している。

2001年3月に食品商社の三友小網(現・三井食品)から、「くらしハウス」を展開するジャイロを買収。2003年5月には「スリーエイト」を展開するヒロマルチェーンと「マイチャミー」を運営するエフジーマイチャミーを、それぞれ買収している。

こうしてM&Aで店舗展開を急いだ結果、複数ブランドのコンビニチェーンを展開することになった。現在では「ポプラ」は同社が運営する全店舗の半分程度に過ぎず、「生活彩家」や「スリーエイト」「くらしハウス」など4ブランドが並立する。

FC加盟店に有利な契約条件が不振の原因?

さらにポプラのFC契約は他の大手コンビニチェーンに比べると、営業時間や仕入れなどの自由度が高いという。24時間営業の店舗は、全体の3割弱にすぎない。FC店が本部に支払うロイヤリティーも一般的な粗利益の35〜45%を徴収する粗利分配方式ではなく、加盟店に有利な売上高の3%を徴収する売上ロイヤリティー制度を採用している。

ポプラのFC契約の条件と内容(同社ホームページより)

皮肉にもそうした「FC店舗ファースト」の戦略によって営業時間がバラバラになり、効率的な配送ができないなどの問題を抱えることになった。今後はブランドの統一あるいは売却でFCを集約化したり、営業時間など店舗運営を標準化したりして経営の効率化を図る必要もあるだろう。

事業の選別も始まった。2021年3月末に富山県、石川県、愛知県から撤退。同9月22日には海産珍味の製造卸を手がける子会社の大黒屋食品(広島市)の全株式を、海産珍味・スナック類製造販売のまるか食品(広島県尾道市)に譲渡することを決めた。

ポプラは近年、コンビニの施設内出店に力を入れてきたが、病院や大学、オフィス内など珍味を取り扱わない店舗の割合が増えたことにより、大黒屋食品との取引高は年々減っていたという。譲渡価額は2億8000万円で、譲渡予定日は2021年10月8日。

大黒屋食品は目黒俊治社長兼会長の父親が1962年に設立した、ポプラの祖業といえるビジネス。これまでグループ店舗のための珍味商材の調達機能を果たしてきたが、本業であるコンビニ事業の立て直しに専念するため主要取引先のまるか食品に大黒屋食品の経営を委ねる。オーナー経営の企業でありながら祖業を手放すという決断に、ポプラの再建に賭ける「本気度」が伝わる。

関連年表

年 月 出 来 事
1976年4月 「フランチャイズチェーンシステムによるコンビニエンスストアの経営」を主たる事業目的として資本金2,000千円で株式会社ポプラを広島市中区銀山町14番17号に設立。
1976年7月 「弁当・惣菜の製造販売」を主たる事業目的として、広島市西区に株式会社弁当のポプラを設立。
1983年10月 フランチャイズ店舗1号店(広島市南区)をオープン。
1991年9月 弁当・惣菜の製販一貫体制の強化のため、株式会社弁当のポプラを合併
1992年7月 九州地区出店強化のため、トップマート株式会社を合併
1998年2月 関東地区においてコンビニエンスストア「生活彩家」44店舗を展開する株式会社ハイ・リテイル・システムを買収。
1998年4月 関東地区においてコンビニエンスストア「ジャストスポット」73店舗を展開するパスコリテール株式会社を買収。
1999年2月 日本証券業協会へ店頭売買有価証券として登録。
2000年2月 東京証券取引所、市場第二部へ株式を上場。
2001年2月 ポプラフーズ株式会社、ポプラ物流サービス株式会社、他子会社5社を吸収合併
2001年3月 関東地区・関西地区においてコンビニエンスストア「くらしハウス」147店舗を展開する株式会社ジャイロを買収。
2003年5月 関東地区においてボランタリーチェーン「ヒロマルチェーン」及び「マイチャミー」255店舗を運営する株式会社ヒロマルチェーン及びエフジーマイチャミー株式会社を買収。
2003年8月 東京証券取引所、市場第一部に指定。
2004年11月 北陸地区においてコンビニエンスストア「チックタック」25店舗を展開する株式会社チックタックシステムズ及びコンビニエンスストア「ホットスパー」29店舗を展開する北陸ホットスパー株式会社を買収。
2009年11月 改正薬事法対応の医薬品取扱店として“コンビニ&ドラッグ”店舗オープン。
2012年7月 大阪市営地下鉄北エリアの運営事業者として駅売店22店舗の運営権を獲得。
2014年12月 株式会社ローソンとの資本業務提携契約締結。
2015年11月 鳥取県に「ローソン・ポプラ」オープン。
2016年11月 株式会社ローソンと山陰地区事業の共同運営会社設立。
2020年9月 株式会社ローソンと共同事業契約並びに、会社分割(簡易吸収分割)に関する吸収分割契約を締結し、その共同事業運営会社として当社100%出資の子会社、株式会社ポプラリテールを設立。


この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、また各種報道などをもとにまとめています。

文:M&A Online編集部