【カゴメ】5年後にはトマトから野菜の会社に

alt
写真はイメージです

カゴメ<2811>は2025年の目指す姿として「トマトの会社から野菜の会社に」をビジョン(未来像)として掲げる。 

生鮮野菜、ジュース、調味料、冷凍素材、サプリメントなど野菜を手軽に摂取できる商品や、野菜の健康価値情報を提供するというのが、その具体的な内容だ。 

同社は米国の野菜・フルーツの種子開発会社を子会社化するなど、M&Aで事業を拡大してきた実績がある。 

2025年に向け、ジュースやサプリメントなどの商品の市場投入がスピードアップされるのと並行して、野菜関連事業拡大のためのM&Aも俎上に載りそうだ。 

相次ぐ新商品投入 

カゴメの歴史は、蟹江一太郎氏が西洋野菜の栽培に着手し、トマトの発芽に成功した1899年にまでさかのぼる。1903年にトマトソース(現トマトピューレー)の製造に着手し、1914年に愛知トマトソース製造を設立した。 

1917年にトマトを入れる籠(かご)の目を「カゴメ印」として商標登録し、1963年に現社名の「カゴメ」に改称した。蟹江一太郎氏によるトマトの発芽から121年間、一貫してトマトを中心に事業を展開してきた。 

この実績を踏まえ「トマトの会社から、野菜の会社に」という長期ビジョンを掲げたわけだが、その理由についてカゴメの山口聡社長は「日本人の野菜摂取量は目標値に対して大きく不足しており、さまざまな野菜の価値を活かした商品を通じて、人々の健康に貢献し、持続的な成長につなげていきたい」と説明している。 

この言葉を裏付けるように、同社は数多くの商品を市場に投入しており、直近の2020年9月29日には「KAGOME GREENS Catch the Rainbow(グリーンズ キャッチザレインボー)」を、大阪の百貨店である阪急うめだ本店の洋菓子売場に出店すると発表した。 

新店舗では、いつでもどこでも野菜をおいしく摂ることをコンセプトに、食べるスムージー(シャーベット状の飲み物)を販売するという。 

このほかにも9月は合計3件、8月は7件、7月も5件の商品発表を行っており、2025年に向け、こうした取り組みが一層活発化することが予想される。その一方で、目標達成のためのM&Aの可能性も否定はできない。 

野菜拡充にM&Aの可能性も 

同社がホームページで公表している情報によると、最初の主要なM&Aは2002年に実施した雪印ラビオの全株式の取得だ。雪印ラビオはチルドデザートや乳酸菌飲料などを製造、販売しており、当時(2002年3月期)の売上高は146億円だった。 

同時にカゴメは、全国ネットワークと流通のノウハウを持つ雪印アクセスの一部の株式も取得しており、両社との関係を深めることでチルド事業の拡大に取り組んだ。 

さらに、ここ10年間の主なM&Aをみると4件の実績がある。最初のM&Aは2010年に、オーストラリアのトマト加工会社セデンコ・オーストラリアなどの事業を譲り受けた案件。 

セデンコ・オーストラリアは生トマトの加工、販売のオーストラリア最大手で、南半球での原料生産拠点を確保するのを狙いにM&Aに踏み切った。 

二つ目は2013年に米国の種子開発会社United Genetics Holdingsを子会社化した案件。United Geneticsは米国をはじめ5カ国に事業会社を持つ企業で、トマトなどの野菜やフルーツの種子開発、生産、販売を手がけている。 

カゴメは優れたトマト品種を含む農業資源の開発を進めており、United Geneticsの子会社化で、海外事業を拡大した。 

三つ目は2015年に家庭用エスニック食品を扱う米国のPreferred Brands International, Inc.を子会社化した案件。 

同社は電子レンジ対応のアジア系エスニック食品を全米の主要スーパーマーケットで販売しており、この分野では米国第1位のシェアを持っていたが、大きなシナジーが見込めなかったため、2017年に譲渡した。 

直近では2019年に行った物流事業の見直しがある。カゴメは、味の素、日清オイリオグループ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社の食品メーカー4社とともに、新物流会社F-LINEを設立(カゴメの出資比率は22%)し、100%出資子会社のカゴメ物流サービスをF-LINEに統合した。 

運転手不足が慢性化する中、5社が保有する倉庫やトラックなどを共同利用して、効率的で安定的な物流を実現するのが狙いだ。 

同社がトマトの会社から野菜の会社になるための取り組みには、これらM&Aの経験が生かされるはずで、2025年に向けてどのようなM&Aが飛び出すのか。同社の動向が注目される。 

中期経営計画を下方修正 

カゴメは新型コロナウイルスの影響で2020年12月期第2四半期の業績が振るわず、さらに新型コロナウイルス感染症の収束時期が不透明なことから、2021年12月期を最終年度とする中期経営計画の数値目標を引き下げた。 

売上高は当初の2120億円から260億円低い1860億円に、事業利益(売上収益から売上原価、販管費を控除し、持分法による投資損益を加えた指標)も当初の162億円から37億円低い125億円に修正した。 

足元の2020年12月期第2四半期は、新型コロナウイルス感染症の影響による巣ごもり需要が拡大したことで、飲料や内食向けの商品は増収となったものの、緊急事態宣言やロックダウンなどの影響で国内外の外食向け商品の販売が落ち込んだ。 

この結果、2020年12月期通期の業績は、売上高が前年度比0.3%増の1814億円、事業利益が同0.8%増の124億円と横ばいで推移するものの、営業利益は同8.4%減の129億円、当期利益は同14.7%減の87億円と減益を避けられない見込みだ。 

M&Aを含めた2025年に向けた取り組みは、同社の業績の回復にも寄与することは間違いない。

【カゴメの沿革と主なM&A】

内容
1899 蟹江一太郎氏が西洋野菜の栽培に着手、最初のトマトの発芽に成功
1903 トマトソース(現在のトマトピューレー)の製造に着手
1914 愛知トマトソース製造を設立
1917 カゴメ印を商標登録
1923 愛知トマトソース製造を愛知トマトに改称
1934 愛知食糧品製造を吸収合併
1963 社名をカゴメに改称
1976 名古屋証券取引所市場第2部に上場
1978 名古屋証券取引所市場第1部に上場、東京証券取引所市場第1部に上場
2002 雪印ラビオの全株式を取得
2010 オーストラリアのトマト加工会社・農業会社の事業を譲受
2013 米国の種子開発会社のUnited Genetics Holdingsを子会社化
2015 家庭用エスニック食品を販売する米国のPreferred Brands International, Inc.を子会社化
2017 米国のPreferred Brands Internationalを譲渡
2019 子会社のカゴメ物流サービスを新物流会社F-LINEに統合

文:M&A Online編集部国の