【平和】続くのかハイペースのゴルフ場買収

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ゴルフ事業を手がける子会社のPGM(東京都台東区)

パチンコ機の製造やゴルフ場の運営などを手がける平和<6412>が、2011年にゴルフ場運営会社のPGMホールディングス(現パシフィックゴルフマネージメント=PGM、東京都台東区)をTOB株式公開買い付け)で子会社化したあと、これまでに12件(16ゴルフ場)のゴルフ場の取得を発表(適時開示情報)した。

PGM子会社後の最初の案件は2015年だったため、2021年までの7年間は、年間2.4カ所のゴルフ場を傘下に収めてきた計算になる。

同社は長期的に安定した収益基盤の構築を目指して、積極的にゴルフ場を買収する方針を打ち出しており、2021年11月12日に開催した2022年3月期第2四半期決算の説明会でも「取得目標数や取得基準は設定していないが、良い案件があれば積極的に取得する」と、これまでの方針に変更がないことを示した。

ただ同社は2022年1月14日に、半導体不足の影響でパチンコ機やパチスロ機の販売が当初の予想を大きく下回る見込みため、業績予想を下方修正した。売上高は20%の減収となり、営業利益と経常利益は60%近い減益に、当期利益は90%ほどの大幅減益になる見込みだ。

ゴルフ事業への影響には言及していないものの、今後も年2件強のハイペース買収を維持できるのだろうか。

新しい収益源としてPGMを傘下に

平和は2011年当時、中核のパチンコ事業の業績が変動しやすいことから、新しい収益源となる事業を模索していた。ゴルフ事業に関しては一度撤退した経験を持つが、再度チャレンジすることを決めたのが、当時120を超えるゴルフ場を運営していたPGMホールディングスの子会社化だった。648億円の巨費を投じる大きな挑戦だ。

発表年月 発表内容 取得金額
1 2011年10月 PGMホールディングス(現パシフィックゴルフマネージメント=PGM、東京都台東区)をTOBで子会社化 648億9500万円
2 2015年9月 千葉国際カントリークラブ(千葉県)を子会社化 5000万円
3 2015年10月 福岡国際カントリークラブ(福岡県)を取得 5000万円
4 2016年10月 ニューキャピタルゴルフクラブ(岐阜県)を取得 非公表
5 2016年11月 鹿島の杜カントリー倶楽部(茨城県)を子会社化 5000万円
6 2017年4月 富津田倉ゴルフ(千葉県)を子会社化 非公表
7 2017年5月 滋賀ゴルフ倶楽部(滋賀県)を子会社化 5000万円
8 2017年6月 福岡飯塚ゴルフ(福岡県)を子会社化 非公表
9 2017年8月 東京ベイサイドゴルフコース(千葉県)を取得 非公表
10 2018年11月 レイクウッド総成(千葉県)、レイクウッド大多喜(千葉県)を子会社化 非公表
11 2019年7月 レイクウッドゴルフクラブ富岡コース(群馬県)を取得 非公表
12 2020年10月 石岡ゴルフ倶楽部(茨城県)、南市原ゴルフクラブ(千葉県)、武蔵ゴルフクラブ(埼玉県)、きみさらずゴルフリンクス(千葉県)の4ゴルフ場を取得 非公表
13 2021年7月 オールドオーチャードゴルフクラブ(茨城県)を取得 非公表

早い段階からゴルフ場買収に意欲

PGM子会社化後のM&A第一弾となったのは、2015年9月に経営再建中の千葉国際カントリークラブ(千葉県)を子会社化した案件。同カントリークラブの民事再生計画が東京地方裁判所の認可を受けたことを受け、5000万円で傘下に収めた。

第一弾ながら当時のニュースリリースには、すでに「ゴルフ事業拡大のため積極的にゴルフ場の買収を行っている」との文言があり、早い段階から買収に意欲を示していたことが分かる。

このわずか1カ月後には第2弾を発表。福岡国際カントリークラブ(福岡県)を傘下に収めた。ここから買収が加速していき、2016年は2件、2017年は4件に達した。

2018年から2021年までは1件ずつに留まっているが、2018年は一度に2ゴルフ場を、2020年は一度に4ゴルフ場を取得するなど、保有ゴルフ場の増加ペースにブレーキはかかっていない。

2021 年 12 月の月次営業実績によると、保有するゴルフ場は146となっており、2021年4月から12月までの第3四半期の売上高は、前年同期比17.4%増、来場者数は同13.3%増と好調に推移している。

半導体不足でダブルパンチ

平和は1949年に群馬県桐生市でメダル式パチンコ機の製造、販売を手がけたのが始まり。1956年に、製造部門「コミック商会」、営業部門「平和物産」で再スタートし、1988年に現在の社名に変更。1991年に東京証券取引所市場第二部に、1997年に東京証券取引所市場第一部に上場した。

創業時の事業である遊技機の製造は現在も存在するが、売上高構成比は30%ほどに低下している。2022年3月期は半導体不足の影響から、構成比はさらに下がることが予想される。コロナ禍でパチンコホールが厳しい経営状態にあり、売り上げが落ち込んでいたところに、半導体不足でダブルパンチを食らった格好だ。

平和の沿革
1949 群馬県桐生市で創業。平和商会としてメダル式パチンコ機の製造、販売を開始
1956 製造部門「コミック商会」、営業部門「平和物産」で再スタート
1960 コミック商会と平和物産を統合した東和工業を設立
1964 社名を東和工業から平和工業に変更
1988 社名を平和工業から平和に変更
1988 日本証券業協会に株式を店頭売買銘柄として登録
1991 東京証券取引所市場第二部に上場
1997 東京証券取引所市場第一部に上場
2011 ゴルフ場運営会社PGMホールディングス(現パシフィックゴルフマネージメント) を子会社化

人員削減などで年20億円を削減

2022年3月期は、売上高が当初の予想より301億円少ない1206億円に、営業利益は133億円少ない90億円に、経常利益は127億円少ない87億円に、当期利益は125億円少ない14億円に留まる。

当初10万8000台の販売を見込んでいたパチンコ機が6万3000台に、5万2000台を見込んでいたパチスロ機が2万9000台に大幅に減少するのが要因だ。

このため同社では、コロナ禍や半導体不足などの激変する事業環境に対応するため、希望退職者の募集や、営業所、出張所の統廃合、役員報酬の減額などの対策を決行する。

希望退職の対象者は遊技機事業にかかわる本社と子会社の社員で、250人の削減に取り組む。廃止となる営業所、出張所は、郡山出張所、八王子営業所など5カ所で、これにより営業拠点は25拠点から20拠点に減少する。2022年4月から新しい体制となる予定で、これら対策で来期以降、年間約20億円のコスト削減を見込む。

さらに役員報酬の減額は、社長が月額基本報酬の30%、副社長が同20%、取締役が同10%といった内容で、2022 年1月から6月までの6カ月間、継続する。

創業時から続いている遊技機事業が、業績の足を引っ張っているわけだが、新しい収益源育成のために実施したM&Aが、狙い通りに業績を支えることになった。

コロナ禍さ中の2021年3月期は70%を越える営業、経常減益となり、当期利益は90%を越える減益となった。それでも4ゴルフ場の買収を実現し、ゴルフ事業拡大の手綱は緩めなかった。

2022年3月期は業績を下方修正したものの、売り上げ、利益はともに前年度を上回る。遊技機事業の落ち込みをカバーするためにも、ハイペースなゴルフ場買収は続く可能性が高そうだ。

【平和の業績推移】単位:億円、2022年3月期は予想

2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期
売上高 1445.73 1077.44 1206
営業利益 235.51 53.11 90
経常利益 232.78 57.99 87
当期利益 158.72 8.65 14

文:M&A Online編集部