【フランスベッドHD】M&Aで福祉用具貸与事業を強化

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東京・赤坂のショールーム

フランスベッドホールディングス(HD)<7840>がM&Aを加速している。2020年3月に東洋特殊工事(和歌山市)を子会社化したのに続き、5月には恵ケアサービス(神奈川県相模原市)を子会社化。さらに10月30日にはカシダス(東京都千代田区)の全株式を取得する。

3社はいずれも福祉用具の販売やレンタルなどを手がける企業。この分野のシェア拡大が狙いで、今後も後継者問題を抱える福祉用具貸与事業者にターゲットを絞り、M&Aを推進していく計画という。

同社は「フランスベッド」のメーカーとして高い知名度を持つが、現在はベッドなどのインテリア健康事業よりも、福祉用具レンタルなどのメディカルサービス事業の方が売り上げ規模は大きい。利益に至ってはメディカルサービス事業が大半を稼ぎ出している。

レンタル需要が堅調に推移していることから、コロナ禍の中でも積極的なM&Aに乗り出しており、当面はメディカルサービス事業が同社の経営を支えることになりそうだ。

創業は自動車シートの生産

フランベッドHDは1949年に東京都三鷹市で創業した双葉製作所が前身。当初は自動車シートを製造していたが、1955年に日本初となる分割式ベッド「フランスベッド」を製造し、翌年に発売したところ大ヒットし、1961年には社名をフランスベッドに変更した。

1963年にはレンタル事業に進出。当初は業績が振るわず赤字続きだったが、12年目からは黒字に転じ、それ以降は堅調に推移している。

1967年に米国シーリー社と技術提携し、シーリーブランドのベッドを生産したのを皮切りに米国、英国、ドイツ、スペインなどの多くの外国企業と技術提携を実施。2015年にはサンリオと提携し、サンリオキャラクターズ商品の販売なども手がけている。

2004年に持ち株会社であるフランスベッドHDを設立し、現在はフランスベッドをはじめ、フランスベッドメディカルサービス、フランスベッドファニチャーなどを傘下に抱える。

【フランスベッドHDの2020年3月期のセグメント情報】単位:億円 

  売上高 営業利益
メディカルサービス事業 312.35 23.26
インテリア健康事業 208.42 1.28

3件立て続けにM&Aを実施

今年に入り立て続けに3件のM&Aを実施した同社だが、実はこれまではそれほど多くのM&Aを手がけていたわけではない。

これまでに適時開示した主な案件は2件で、そのうちの1件が2020年9月に発表したカシダスの子会社化。同社は介護事業を展開するロングライフホールディング<4355>の傘下企業で、2019年10月期の売上高は15億7600万円、営業損益は1218万円の赤字だった。

もう1件は2010年にさかのぼる。同年1月に韓国の子会社である韓国フランスベッド(ソウル市)を、韓国の医療器具製造会社ソルゴバイオメディカル(京畿道平澤市)に譲渡すること決めた。

韓国フランスベッドは韓国国内の介護事業を確立することを目指し2006年1月に設立されたが、業績が低迷し、回復の見通しが立たない状況となっていた。

このほかに同社が公表しているのは2009年の翼(高松市)、2020年の東洋特殊工事と恵ケアサービスなどで、今年になってM&Aを積極化させていることが分かる。

中期経営計画の達成は困難

フランスベッドHDは2021年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画に取り組んでおり、2021年3月期に売上高560億円、営業利益40億円、経常利益39億5000万円、当期利益25億円の目標を掲げている。

ところが計画に対して遅れが生じていたところに、新型コロナウイルスの影響が加わり、計画数字を大きく下回る見込みとなった。

同社が2020年7月に公表した2021年3月期の業績予想では、売上高は500億円(前年度比4.6%減)、営業利益は25億円(同0.3%増)、経常利益は26億円(同6.7%増)、当期利益は16億円(同5.2%増)にとどまる。

中期経営計画に対して売上高は60億円、営業利益は15億円のそれぞれ未達だが、前年度との比較では、新型コロナウイルスの影響で赤字に転落する企業が続出する中、4.6%の減収は健闘していると言えそうだ。

利益については経費の削減や、堅調に推移している福祉用具貸与事業に人員をシフトするなどして、増益を見込む。

【フランスベッドHDの業績推移】単位:億円、2021年3月期は予想

  2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期
売上高 517.64 524.3 500
営業利益 23.63 24.92 25
経常利益 23.61 24.36 26
当期利益 25.99 15.2 16


リハテックを強化

フランスベッドHDは、福祉用具貸与事業のシェア拡大のほかにも、いくつかの注力事業を持つ。その一つがインテリア健康事業。同社はメディカルサービス事業で培ったレンタルのノウハウをインテリア健康事業でも展開することで、現在のインテリア健康事業の売上高に占めるレンタルの割合を3分の1から、2 分の1にまで引き上げる計画だ。

もう一つは2011年に創設した高齢者の日常生活活動のサポートを目的にした新ブランド「リハテック」の拡充。リハテックはリハビリテーションとテクノロジーを組み合わせた造語で、高齢者や障害者が活動的に、楽しく快適に過ごすための商品を指す。

すでに電動シニアカーや、車椅子、光る杖、歩行器、電動座椅子などを品ぞろえしており、今後も新たな商品開発に力を入れる方針。

福祉用具貸与事業者のM&Aとともに、こうした取り組みを強化し、次期中期経営計画を策定する予定で、新型コロナウイルスの影響を見ながら目標数値の合理的な算定が可能になった段階で速やかに公表するとしている。

総務省の人口推計では65歳以上の高齢者の割合は28%を超えており、今後もこの割合は高まっていく見通しにある。新型コロナウイルスの影響が限定的な同社だけに、次期中期経営計画の策定には、さほど長い時間は必要なさそうだ。

フランスベッドHDの沿革
1949 池田実氏が個人経営で双葉製作所を創業し、自動車シートを製造
1955 分割ベッド(商標フランスベッド)の製造を開始
1961 フランスベッドに社名を変更
1963 東京証券取引所第二部に上場、大阪証券取引所第二部に上場
1964 名古屋証券取引所第二部に上場
1967 米国シーリー社と技術提携し、シーリーブランドのベッドを生産
1968 英国マルチラスティック社と技術提携
1969 羽毛布団の製造事業を開始
1970 英国スランバーランド社と技術提携
1970 米国キャラベルエア社と技術提携
1972 ホテル、旅館用の寝具・リネン類のリース、洗濯業務を開始
1973 病院用白衣・病衣の販売、リース、洗濯業務を開始
1975 ピエール・カルダン氏とベッドに関するデザインライセンス契約を締結
1976 人造大理石・モルデッドマーブルの生産を開始
1976 システムキッチンカウンター、バス、洗面化粧台を発売
1983 フランスベッド販売で療養ベッドのレンタルを開始
1985 米国レゲット&プラット社と技術提携
1987 フランスベッド販売を吸収合併し在宅介護機器のレンタル、販売を承継
1987 フランスベッドメディカルサービスに社名を変更
1987 医療機器のレンタルを開始
1988 英国スランバーランド・ホールディングス社と技術提携
1990 介護支援ベッドを発売
1990 サザビー社とライセンス契約を締結、「SAZABY BED & LINEN」を発売
1992 ドイツのフェミラ社と提携、テキスタイルベッド「フェミラ」を発売
1992 住宅リフォーム事業を開始
1992 スペインのウルタード社と提携
2004 フランスベッドホールディングスを設立
2009 翼の株式を取得し、子会社化
2011 高齢者の日常生活活動のサポートを目的に、新ブランド「リハテック」を創設
2015 サンリオと提携し、サンリオキャラクターズ商品を発売
2016 デイサービス事業を会社分割でミストラルサービスに承継
2020 東洋特殊工事の株式を取得し、子会社化(3月)
2020 恵ケアサービスの株式を取得し、子会社化(5月)
2020 カシダスの全株式を取得し、子会社化(10月30日予定)

文:M&A Online編集部