【ダスキン】好調な業績を背景にM&A強化へ

alt
写真はイメージです

コロナ禍の中、ダスキン<4665>の業績が好調に推移している。同社は2022年3月期の業績予想を、2021年8月と10月に2度上方修正した。

8月は、売り上げの4分の1ほどを占める「ミスタードーナツ」のテイクアウト需要が旺盛なのに加え、新たに発売したドーナツ商品が好評で計画を上回る売れ行きを示しているのが理由だ。売上高は1.1%の増収にとどまるが、利益は15%ほどの増益となる。

10月も引き続きミスタードーナツが好調に推移していることから、8月の上方修正からさらに売上高は0.8%、利益は20%前後引き上げた。この結果、2022年3月期の売上高は4.4%増の1605億円、営業利益は80.6%増の84億円、経常利益は58.3%増の105億円、当期利益は2.55倍の72億円に急拡大する見通しだ。

新中期経営計画を2022年2月に公表

同社は2021年3月期に中期経営計画を終え、新たな計画を2021年4月からスタートする予定だった。ところが、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を見極めることができず、新計画を策定できない状況に陥った。

このため2022年3月期は状況を見極める準備期間とし、新たな中期経営計画は2023年3月期から2025年3月期の3年間を対象に策定する方針に切り替えた。

一方、同社は2021年に3件のM&A関連情報を発表した。1件は10月に発表した氷菓子、アイスクリーム製造子会社の蜂屋乳業(大阪市)の売却、もう1件は4月に発表した洋服レンタルサイト運営のEDIST(東京都渋谷区)の子会社化。

そして3件目は、同じく4月に発表した宅配ピザ事業を取得する予定だったのを中止するという内容だった。中止とはなったものの、2020年に発表した同案件は2016年以来4年ぶりのM&A(適時開示情報ベース)であり、このあとに2件のM&A案件が続いたわけだ。

2022年2月に公表する予定の新たな中期経営計画にM&Aがどのような位置づけで盛り込まれるのか。次の一手に注目が集まりそうだ。

【ダスキンの業績推移】単位:億円、2022年3月期は予想

2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期
売上高 1591.02 1537.7 1605
営業利益 65.77 46.51 84
経常利益 79.29 66.33 105
当期利益 55.91 28.21 72

ミスタードーナツが黒字に転換

2度の業績上方修正の判断材料となった2022年3月期第2四半期決算は、主力事業であるモップやマットなどの清掃用具のレンタル事業(訪販グループ)が、モップやマットに除菌、抗菌、抗ウイルスなどに衛生性能を付加したことや、新型コロナウイルスワクチン接種会場などでの衛生サービスの提供などにより、前年同期比3.6%の増収を達成した。

モップなどのダストコントロール商品のレンタルと販売からなるクリーンサービス事業が、コロナ禍の影響で減収を余儀なくされたが、介護用品や、検温設備などのイベント用品のレンタルなどが好調に推移したのが効いた。

ミスタードーナツなどのフード事業(フードグループ)でも、 テイクアウト需要の取り込みを強化するとともに、来店前の注文や受取時間指定ができるネットオーダーシステムの導入のほか、出前館と提携してのデリバリーサービスの拡充などに取り組んだ結果、同24.9%の増収となった。

ミスタードーナツは前年同期に新型コロナの影響で大幅に落ち込んでいたが、前年度後半から売り上げが回復し、この期もその勢いを維持できたほか、6月に発売した「むぎゅっとドーナツ」が、おやつとしてだけではなく、軽食としても利用できるドーナツとして、売り上げ増加に寄与した。

また、宇治茶専門店「祇園辻利」や、焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESETART」、シュークリーム専門店「クロッカンシュー ザクザク」との共同開発した商品も好調に推移した。

こうした商品の増収に伴い、利益も増加しており、訪販グループは同21.0%の増益、フードグループは前年同期の2億3200万円の赤字から17億5100万円の黒字に転化した。

ダスキンはコロナ禍を乗り越えつつあると言ってよさそうだ。

M&Aにも動きが

業績が好調に推移する中、M&Aについても動きが見られた。同社は氷菓子やアイスクリーム、菓子類の製造、販売する子会社の蜂屋乳業の全株式を、食肉加工や外食を手がける子会社を有するバンリュー(兵庫県姫路市)に譲渡することを決めた。

ミスタードーナッツの店舗でのアイスクリーム販売などの事業展開を検証してきたが、事業の選択と集中による事業構成の適正化の一環として、売却に踏み切った。

また、航空券販売サイトを運営しているアドベンチャー(東京都渋谷区)傘下で洋服などのレンタルサイト「EDIST.CLOSET」を運営するEDISTの全株式を取得し子会社化することも決めた。

「所有するから借りる」といった暮らし方の変化をとらえ、ワークライフマネジメントサービスの付加価値向上につなげるのが狙いだ。

さらに、いちごホールディングス(仙台市)と同社子会社のストロベリーコーンズ(同)が展開する宅配ピザ事業取得の中止を決めた。

ミスタードーナツに次ぐフード事業の育成に向けた取り組みの一環として、ピザ事業を展開する予定だったが、コロナ禍で事業環境が大きく変化したことから、前年の2020年6月に締結した事業譲受契約を解除した。

同社は2017年10月に結んだ業務提携に基づき、ストロベリーコーンズの「ナポリの窯」(ピザ商品)をミスタードーナツ店舗で販売してきたが、この業務提携についても同時に終了した。

ダスキンは長期戦略「ONE DUSKIN」の第2フェーズとして2021年3月期を最終年度とする「中期経営方針2018」に取り組んできた。この計画には新たな成長のための基本戦略にM&Aの強化を掲げていた。

2020年に4年ぶりに発表したM&Aは、この戦略に沿ったもので、2021年も戦略に変更はなかった。新中期経営計画は、長期戦略「ONE DUSKIN」の方針に沿って骨子や数値目標などを設定されることになるわけで、第2フェーズに引き続きM&Aの強化が盛り込まれる可能性は高そうだ。

ダスキンの沿革と主なM&A
1963 サニクリーンを設立
1964 ダスキンに社名変更
1964 化学ぞうきん「ホームダスキン」を発売
1971 ミスタードーナツ事業を開始
2006 東京証券取引所、大阪証券取引所の各市場第1部に上場
2010 アザレプロダクツ、共和化粧品工業を完全子会社化
2012 蜂屋乳業を完全子会社化
2014 中外産業を完全子会社化
2020 宅配ピザ事業を取得を発表
2021 宅配ピザ事業を取得中止を発表
2021 EDISTを子会社化
2021 蜂屋乳業を売却

文:M&A Online編集部