【月島ホールディングス】持ち株会社が始動、10月にJFEエンジの上下水道事業を統合

alt
月島ホールディングスの本社(東京都・勝どき)

月島ホールディングス(HD)が4月1日に始動した。月島機械が持ち株会社に移行し、社名を改めた。グループの本部機能を集約し、経営効率化やガバナンス強化につなげるのが狙い。今年10月には、JFEエンジニアリング(東京都千代田区)との間で、国内における上下水道事業の統合を控える。持ち株会社制のもとで、M&Aへの機動性も一層高まりそうだ。

「水環境」と「産業」が2本柱

月島HDは上下水道設備を中心とする「水環境事業」と、化学や鉄鋼、食品用などの装置・プラント設備(ろ過機、遠心分離機、乾燥機など)を手がける「産業事業」を2本柱とする。売上構成は水環境事業が6割強に対し、産業事業が4割弱。

持ち株会社制のスタートに伴い、傘下の事業子会社である月島アクアソリューション(東京都中央区)が水環境事業を、月島機械(同、旧月島マシンセールス)が産業事業をそれぞれ承継した。

水環境事業を担う月島アクアソリューションはJFEエンジニアリングの上下水道事業と統合する10月1日をもって、「月島JFEアクアソリューション」に社名を変更する。事業統合に伴う月島JFEアクアの出資比率は月島HD60%、JFEエンジ40%とする予定。

上水道では、月島が排水処理(汚泥処理)に、JFEエンジが浄水処理(薬品注入)に強みを持つ。また、下水汚泥処理では月島が濃縮、脱水、消化、焼却を、JFEエンジが消化ガス発電などを得意とする。両社の技術・運転管理のノウハウを相互補完・融合し、拡大するPPP(公共サービスの官民連携)事業への対応力や、機器・工事の調達力を高める構えだ。

メタウォーターを追撃へ

国内の上下水道事業をめぐっては今後、人口減による市場の縮小などで競争環境が厳しさを増すと予想されている。こうした状況下、統合会社は強固な事業基盤を確立し、リーディングカンパニーを目指す。

上下水道事業関連の売上高は月島が約600億円、JFEエンジがおよそ400億円で、1000億円企業が誕生する運び。この分野で国内専業トップのメタウォーター(2023年3月期の売上高予想は1490億円)を追撃する体制がひとまず整う形だ。そのメタウォーターは2008年に日本ガイシと富士電機の水環境部門が統合して発足した。

JFEエンジをパートナーとする事業統合を成功に導くことができるのか。PMI(M&A後の統合プロセス)を手始めとし、持ち株会社へ移行後の新生・月島の本領が早速試されることになる。

月島機械(現月島HD)が1月末に発表した2023年3月期業績予想は売上高7.4%増の1000億円、営業利益12.2%減の50億円、最終利益53.5%減の38億円。売上高は3期ぶりに1000億円台乗せを見込む。一方、最終利益は前期にあった市川工場跡地(千葉県市川市)の売却益の反動で大幅な減益となる。

◎月島ホールディングスの業績推移(単位は億円)

二次電池関連で、撹拌機メーカーを買収

月島ホールディングスを支えるもう一つの柱が産業事業だ。水環境事業は官公需が大半を占めるのに対し、産業事業は民需を主体とする。化学、鉄鋼、食品などの産業用プラント・機器をはじめ、廃液燃焼、固形廃棄物処理、二次電池(リチウムイオン電池)製造関連設備といった環境・エネルギー分野に力を注いでいる。

戦略投資分野と位置付けるのが二次電池分野。月島が長年培ってきた晶析(成分を結晶化して取り出す)、ろ過、乾燥などの技術・ノウハウを応用し、電池の性能を左右する正極材活物資などの電極材料製造設備を手がけている。

2020年4月に高速撹拌機の専業メーカー、プライミクス(兵庫県淡路市)を子会社化した。同社は電極製造の後工程である混合に強みを持っており、二次電池分野で営業連携を進めている。買収金額は非公表。プライミクスの創業は1927(昭和2)年にさかのぼり、日本初の工業用クロムメッキ工場として大阪市で発足した東洋クロームをルーツとする。

産業事業ではM&Aの取り組みが比較的活発だ。2017年に、圧力容器、熱交換器など各種プラント機器類の製造や建設工事を手がける三進工業(川崎市)の全株式を53億円で取得し、子会社化した。プラント建設、補修工事、単体機器製造における補完が狙い。

月島として初の海外企業の買収に踏み切ったのは2014年。ドイツの工業用ろ過機メーカー、BOKELA(ボケラ)の株式80%余りを取得した(その後、完全子会社化)。ボケラは資源・素材、化学、医薬産業向け脱水ろ過分野で独自の技術を蓄積し、欧州のほかに米国に販路を持つ。

同じ2014年には、化学装置メーカーの大同ケミカルエンジニアリング(大阪市)を子会社化。製造工程で排出される廃液・廃酸の処理・処理への対応力を強化した。

次期中期経営計画、近く公表へ

月島は2023年5月をめどに新中期経営計画(2024年3月期~26年3月期)を公表する。前中計は当初3カ年でスタートしたが、期間を1年延長して2023年3月期に終了した。持ち株会社制を踏まえた事業・投資戦略や計数目標を策定するための時間が必要と判断したことによる。

前中計では成長戦略として、「エネルギー・環境事業の拡大」と「海外ビジネスの拡大」を掲げたが、次期中計でも引き続き重点課題となるのは間違いない。

エネルギー・環境は水環境事業、産業事業の双方にまたがる。具体的には次世代型汚泥焼却炉、廃液・固形燃料処理装置、二次電池設備などの拡販に取り組んできた。一方、海外ビジネスはアジア、欧州に軸足を置くが、売上高比率は全社で1割程度にとどまる。

持ち株会社制のもとで、成長戦略をどこまで加速できるのか。その手立てとして、海外を含めてM&Aにアクセルを踏み込む可能性は十二分にある。

文:M&A Online