【ホシザキ】インド・アフリカ市場での高成長に賭けるM&A戦略

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ホシザキ<6465>は業務用厨房機器大手で、「ペンギンマーク」で知られる。冷凍冷蔵庫、食洗機は国内首位、製氷機では世界シェア約3割を占めるという。M&Aにも積極的で、同社の経営戦略を大きく左右する。そのカギは海外での事業拡大だ。

海外展開の「時間を買う」M&A

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで、日本を含む世界中の飲食業界は大変な苦境に追い込まれた。2020年12月期は連結売上高が前期比17.9%減の2383億1400万円、連結営業利益が同43.5%減の184億4700円と大幅に落ち込んだ。

しかし、2021年12月期には連結売上高が同15.2%増の2744億1900万円、連結営業利益が同35.1%増の249億3100万円と回復した。しかし、コロナ前の水準には届かない。そこで同社が目をつけたのが海外市場だ。

もともと同社は海外進出に積極的だった。国内では押しも押されもせぬ業界最大手だが、足場の日本市場は少子高齢化で外食産業の伸び悩みが予想される。そこで同社は海外事業を迅速に拡充するためM&Aを選択した。いわゆる「時間を買う」M&Aだ。

連結売上高 (対前期比) 連結営業利益 (対前期比)
2017年12月期 2,822.15億円 360.65億円
2018年12月期 2,927.74億円    3.7% 364.46億円     1.1%
2019年12月期 2,901.36億円   -0.9% 326.64億円  -10.4%
2020年12月期 2,383.14億円  -17.9% 184.47億円  -43.5%
2021年12月期 2,744.19億円   15.2% 249.31億円   35.1%

インドでの増産体制を構築

カギとなっているのはインドだ。インドでは2012年12月にウエスタン・リフリジレーション(Western Refrigeration Private Limited、ムンバイ市。売上高約46億9000万円)を子会社化すると発表した。ウエスタン・リフリジレーションの第三者割当増資の引き受けるのに加え、既存株主が保有する株式の一部を取得して合計で50.01%の株式を取得する。

ウエスタン・リフリジレーションは、冷蔵ボトルショーケース及び冷蔵・冷凍ストッカーの開発・生産・販売を手がける。ホシザキはウエスタンを取り込むことで、自社製品をインド国内での製造・販売したり、ウエスタン製品の開発力強化を支援したりしてM&Aによる相乗効果を狙う。

ホシザキは2022年に同社を通じ、25億円を投資して印グジャラート州で4カ所目となる新工場棟を建設。10万平方mの新工場棟で、年間32万台の生産能力を持つ。増設により同工場の総生産能力を80万台に引き上げる。

新工場棟ではふたつきで底が深く冷凍能力が高い冷凍庫「ディープフリーザー」の生産を集約。高温な現地のアイスクリーム販売店やスーパー、飲食店向けに販売していく。国連が7月11日に発表した報告書で、2023年にインドの人口が中国を超えて世界最多になると発表した。

現在、両国の人口は14億人を超えているが、中国が人口減に向かうのに対してインドは増加が続く見通し。こうした人口増を背景に、インドのフードサービス市場はさらに拡大する可能性が高い。ホシザキは、そこに目をつけた。

次なるターゲットはアフリカ

2021年9月にはケニアのナイロビに営業拠点を開設し、未開拓のアフリカ市場に本格参入した。アフリカ進出はインドと同じく人口増と経済成長に伴う消費増でフードサービス市場の成長が見込まれるからだ。

ホシザキのアフリカ戦略にはインドが深く関わっている。かつてホシザキのアフリカ事業はウエスタンが担当していた。理由はインドで生産する方が安かったからだ。これは人件費もさることながら、製鉄・非鉄金属の生産大国であるインドでステンレスなどの素材が安価に調達できることによる。

そこで販売拡大を狙い、ナイロビにウエスタンの支店となるホシザキ・ウエスタン・アフリカ(HOSHIZAKI WESTERN AFRICA)を置き、営業・アフタサービス網を展開することにした。

ナイロビをアフリカ初の拠点に選んだ理由は、アフリカでも急速に経済成長を実現している国の首都であり、ナイロビに国連機関の国際連合環境計画 (UNEP) や国際連合人間居住計画 (UN-HABITAT) の本部が置かれるなど東アフリカの中枢機能を持つからだ。今後はアフリカ企業やアフリカに拠点網を持つ欧州企業を買収する可能性が高い。

2021年12月末時点の現預金は前年同期比15.0%増の2407億2300万円で、手元流動性比率は10.9カ月分。一般的には手元流動性は大企業で1カ月分を上回ると健全性が高いとされる。これだけの現預金を積み上げているのは、M&Aに備えるためだ。

今後も海外展開のためのM&Aに乗り出すことになるだろう。そのための「資金」なのだ。一方、M&Aの案件数が少ないと無駄に資金を寝かせていることになり、株主の反発を招きかねない。積極的なM&Aを持続することが、同社の財務上の課題ともいえそうだ。

ホシザキのM&A一覧

公示日 取引価額(億円) 内 容
2012年12月14日 非公表 インドの業務用冷蔵庫メーカーWestern Refrigerationを子会社化
2013年1月29日 非公表 米食器洗浄機メーカーJacson MSCの事業を取得
2015年4月13日 非公表 中国業務用冷蔵庫機器メーカーの浙江愛雪制冷電器を子会社化
2015年10月26日 非公表 マレーシアのフードサービス機器販売会社POLAR SEALから事業を取得
2018年8月7日 非公表 2015年に買収した浙江愛雪制冷電器有限公司を譲渡
2019年11月7日 非公表 トルコの業務用厨房機器メーカーÖztiを子会社化
2022年1月18日 非公表 業務用製氷機メーカーのイタリアBrema Groupを子会社化
2022年7月15日 22.44 業務用厨房施工の中国「北京東邦御厨」を子会社化

この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、また各種報道などをもとにまとめています。

文:M&A Online編集部