アップルの新ヘッドホン「AirPods Max」は待ちの一手

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米アップルが新型ヘッドホン「AirPods Max」を2020年12月18日に発売する。6万1800円(税別)と実売価格では競合モデルの2倍以上という高額商品ながら、出荷まで12~14週間待ちとブランド力の強さを見せつけた。さて、この「AirPods Max」は「買い」なのか「待ち」なのか。

「初代モデルはプロトタイプ」のジンクス

結論から言えば「待ち」だ。アップルはオーディオ製品の自社開発に力を入れており、2014年に米ビーツ・エレクトロニクス(Beats Electronics)を買収。2016年にワイヤレスイヤホンの「AirPods」、2019年にノイズキャンセリング機能を備えた「AirPods Pro」を発売している。

「AirPods Max」は三つ目の機種で、初のヘッドホンタイプ。極めて広い帯域で大幅にノイズを削減してくれるノイズキャンセリング機能やリアルなサラウンド感、音の移動感を再現する音響機能など、ヘッドホンとしての出来ばえも上々だ。なのに、なぜ「待ち」なのか。

理由はアップルが新しいジャンルに参入する場合、その初代モデルはプロトタイプ(試作品)に近い傾向があるからだ。

例えば現在はノート型パソコンの入門機となっている「MacBook Air」の初代モデルは2008年に「世界最薄のノートブック」として発売され人気を集めたが、USB端子が一つな上にモノラルスピーカーという物足りない仕様だった。ところが2010年のモデルチェンジでUSB端子が二つ、ステレオスピーカーが装備され「使えるノートパソコン」になった。

タブレット端末も2010年に発売された「iPad」の初代モデルは分厚く、重いとの指摘があったが、2011年発売の2代目モデル「iPad2」は初代モデルに比べるとおよそ33%薄く、15%軽くなった。

さらにカメラの追加や3軸ジャイロ、直線加速度、環境光のセンサーを新たに搭載するなど、機能を大幅に強化。初代「iPad」の販売期間が11カ月間だったのに対して、「iPad2」は後継モデルが登場した後も併売され、3年間ものロングセラー商品となった。

初代モデルに比べると圧倒的に薄くて軽く、カメラ搭載など機能を大幅に強化した「iPad2」(Photo by Michael Schmid)

「AirPods Max2」は画期的な進化を遂げる

腕時計型のウエアラブル端末の「Apple Watch」も2015年に初代モデルが発売されたが、2016年に発売された「Apple Watch Series 2」では初めて水深50メートルまでの耐水機能を備え、水泳やマリンスポーツでのトレーニングも記録できるようになった。非接触型ICカードの「FeliCa」も搭載してSuicaやiDといった電子マネーに対応するなど、格段の進化を遂げている。

「AirPods Max」も2代目モデルは相当の機能強化がなされるはずだ。初代モデルが348グラムと重いことから、本体の軽量化は間違いないだろう。充電ケーブルもアップル独自のLightningケーブルから汎用性の高いUSB-Cに切り替わるかもしれない。

さらには 3.5ミリメートルオーディオジャックを内蔵する可能性もある。価格は下がらないかもしれないが、使い勝手を考えれば2代目モデルが登場するまで「待ち」が正解だ。

唯一の懸念材料は。2代目モデルがいつ発売されるか、だ。「iPhone」や「Apple Watch」のように毎年モデルチェンジする商品もあれば、「iPad」のように不定期なものもある。

アップルがオーディオ製品に力を入れていることを考えれば来年かもしれないし、スマートホンやタブレット、ウェアラブル端末などのIT機器に比べれば技術進歩が少ないオーディオ製品だけに数年かかるかもしれない。

「記念すべき初代モデルを手に入れたい」というアップル信者であれば、間違いなく「買い」だ。機能は十分で、デザインもアップルらしく美しい。それにヘッドホンはIT機器と違って「型遅れになると使えない」という製品ではないから、壊れない限り、10年後も使い続けることができる。いま買っても、決してムダにはならない。

付属品のケースも含めてデザインは、さすがの「アップルクオリティー」だ。(同社ホームページより)

ただ、リセールバリューは期待しない方がいいだろう。アップル製品は次期モデルが登場すると、たちまち中古市場で値崩れが起こるからだ。

文:M&A Online編集部