米アップルのスマートフォン「iPhone」の最新2機種が、日本でも2018年9月21日に発売された。最上位機種「XS Max」の画面はiPhone史上最大の6.5インチ、端末価格も12万4800円(消費税別)と昨年の発売機種「X」を1万円以上も上回る。10月26日には廉価版の「XR」が発売される予定だ。
米国内のメディアは、意見が分かれている。価格について特にコメントすることなく、大画面とカメラの性能の賞賛に徹したのがNew York Times紙(9月18日)。CNN(9月19日)と、テクノロジーメディアサイトのギズモード(9月28日)は、値段の高さを指摘したうえで、「1-2年ではなく長期間、“投資”として使うべき製品」と声をそろえた。
経済誌フォーブス(9月23日)は、XRには疑問符がつくが、XSシリーズは買い替えの価値ありと認めた。一方で「XSシリーズに、飛びつくほどの価値はない」と慎重論を示したのがワシントンポスト紙(9月21日)。「お買い得商品はいくらでもあり、その一例がXRだ」とした。メーンストリームのXSと廉価版のXRの評価は分かれている。
XSおよびXSMaxの4Gスピードは、AT&TやT-Mobile and Verizonのいずれの回線でもライバル機種と比べて格段に速い。ヘビーデータユーザーにとっては、これだけで買い替えの価値があるだろう。
一方で、XRは中途半端な存在となる。XRのメリットは、バッテリーの持ちと低価格にしてXSやXS Maxの性能をあらかた取り入れた点にある。しかし性能をよく検討すると、XRなら従来機種の「iPhone X」などを使い続けることで妥協できるように思われる。
今回発売の3機種のうち、特にXSとXS Maxは、最もスマートで最速で最良の製品だと断言できる。しかしこれらの購入は、フェラーリを買い替え続けることに等しい。エンジンや色その他、新しさに目を奪われても、結局は「昨年買った物と同じ」だ。
そしてフェラーリとiPhoneの共通性は、多額の金を要すること。買うなとはいわない、要は予算次第だ。もし購入を迷いに迷っているなら、「数年間の投資」と考えるとよい。これらの機器は次第に耐久性を増しており、2年周期の買い換えサイクルという従来の常識は薄らぎつつある。アップルが高い値札をつけることができた理由もそこにある。
Xに“S”という新たなネーミングを付け加えた以上、消費者は新製品に何かしら衝撃的な要素とひねりを期待していたはず。1-2年おきに買い替えることが常識化している消費者にとっては、今回の購入はよい投資になる。「iPhone7」か「同8」からの買い替えなら、今回の性能は衝撃的とも感じるだろう。特にカメラ機能ははるかに改善された。HDRとボケ(bokeh)は他の製品を寄せつけない特性を持つ。
ただ「iPad」と同様、消費者がアップグレードを望まなくなる日が来る。製品は高額化し、壊れにくくなる。その点、XSシリーズは「5年間、持ち続けたい」と思う最初の製品かもしれない。1000ドル(約11万4000円)超えは財布を開けるかどうかの分岐点だが、この製品なら数年間は所有し続けることができるだろう。
昨年のXと比べるとXSの改良点は少しにとどまり、バッテリーの長時間化もわずかにすぎない。下記のように「お買い得品」なら多くある。
10月26日に発売されるXRは、6.1インチのノーエッジ(縁なしの全面)画面で、アップルの最速プロセッサーを搭載している。性能はXSの90%だが、価格は75%ですむ。画面の質やケース(外装)で劣り、デュアルカメラでないなどの違いはあるものの、腰を据えて発売を待つ価値はある。
10月9日に発売される米グーグルの「pixel」は、アップル利用者を羨ましがらせるかもしれない。また韓国のサムソン電子が8月に発売した「Note9」(1000ドル)は、6.4インチの画面、スタイラス、虹彩リーダー、キーボードとの接続が可能など、ある面でXS Maxよりも優れている。
Xは公式販売こそ停止されたが、XSの95%のよさを備えている。顔認証、デュアルカメラ機能もあり、今なら800ドル(約9万1000円)で購入できる。もし顔認証にこだわらないのなら、600ドル(約6万9000円)の8や450ドル(約5万Ⅰ000円)の7といったiPhoneの旧モデルを選ぶという選択肢もある。
<参照記事>
https://www.nytimes.com/2018/0...
https://www.forbes.com/sites/g...
https://money.cnn.com/2018/09/...
https://gizmodo.com/the-iphone...
https://www.washingtonpost.com...
文:Yuu Yamanaka/編集:M&A Online編集部