「ブイチューバー」が「ユーチューバー」を逆転 その要因は?

alt
ANYCOLOR のニュースリリースより

ブイチューバーグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLOR<5032>の売上高が、ユーチューバーのサポート事業を手がけるUUUM<3990>の売上高を逆転する見通しとなった。

当初、UUUMは2023年5月期の売上高を270億-285億円としていたが、業績予想を下方修正し230億-240億円に引き下げた。これに対し、ANYCOLORは当初190億-210億円としていた2023年4月期の売上高を2度上方修正し250億円に引き上げた。この結果、わずかだがANYCOLORの売上高がUUUMの売上高を上回ることになったのだ。

本業の儲けを示す営業利益は当初からANYCOLORが上回っていたが、業績修正の結果、その差は一段と開き12倍から17倍ほどとなる見込みだ。ブイチューバーとユーチューバーの好不調を分けたのは何なのか。

再生回数、再生時間に差

UUUMは2023年5月期第3四半期に業績予想を下方修正し、売上高で40億-45億円、営業利益で6億円引き下げた。減少率は売上高で15%ほど、営業利益は50%前後に達した。この結果、売上高は前年度並みにとどまり、営業利益は前年度の30-50%ほどの減益となる。

動画再生回数が当初の想定を下回るのに加え、広告出稿意欲の低下や新作ゲームタイトル「かみながしじま」の発売を延期したことなどが業績の足を引っ張った。

【UUUMの2023年5月期の業績予想推移】単位:億円

一方のANYCOLORは2023年4月期第2四半期に売上高を15億-35億円、営業利益を11億9000万-21億9000万円引き上げ、さらに同第3四半期に売上高を25億円、営業利益を15億円引き上げた。

ブイチューバーのオリジナルグッズや音声を録音したデジタル商品などの販売、企業とのタイアップ広告、IP(知的財産)ライセンス、メディア出演などが好調に推移していることなどから業績が大きく上振れした。

同社の2023年4月期第3四半期の状況を見ると、「にじさんじ」に所属する日本国内で活動するブイチューバーの人数は前年同期より11人増え118人となり、再生時間は前年同期よりも7%増え4億6300万時間となった。海外も同様で、所属するブイチューバーは同16人増え31人となったほか、再生時間は同4.7倍の1億500万時間になるなど好調さが目立つ。

【ANYCOLORの2023年4月期の業績予想推移】単位:億円

ブイチューバーは自身の分身となるキャラクターを用いてユーチューブなどの動画サイトで情報を発信する人たちで、素顔を隠して活動ができる半面、キャラクターを用意するなどの手間がかかる。

これに対しユーチューバーはスマホがあれば簡単に動画を投稿できる手軽さがある。バーチャルとリアルの対決は現時点ではバーチャルに分があるようだが、まだまだ決着がつくまでは長そうだ。

文:M&A Online編集部