女性向けファッションブランドANAPが債務超過転落で経営危機に

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女性向けファッションブランドを展開するANAP<3189>が経営危機を迎えています。

2023年8月期第2四半期に4億900万円の純損失(前年同期間は2億9,600万円の純損失)を計上し、1億3,000万円の債務超過に転落しました。7月14日には通期業績の下方修正を発表。2,000万円としていた純利益を7億2,400万円の純損失へと一転させ、業績改善での債務超過の解消が困難になりました。

同社はピアズ<7066>に対して新株予約権を発行していましたが、株価が低迷。行使価額351円を下回る日が続き、行使がなされずに資金を調達することができていません。資金不足で広告宣伝費がかけられず、トップラインが伸ばせないという負のループに陥っています。

この記事では以下の情報が得られます。

・ANAPの業績推移
・業績不振の背景

ギャル系ファッションを開拓したANAP

ANAPは「ANAP」「ANAP KIDS」のブランドで、全国のイオンモールや、原宿、SHIBUYA109などに出店しています。1992年に1号店となるANAP原宿店を出店。2013年11月に上場しました。90年代はバブル期のDCファッションから、「渋カジ」と呼ばれるアメカジをベースとしたストリートファッションへと変化した時代です。

90年代後半はアムラーと呼ばれる浅黒い肌に茶髪をなびかせ、厚底ブーツのいわゆるギャルスタイルが流行します。ギャル系ファッションはサーファーやスポーツ、ヒップホップ、古着、モードなど様々な文化を取り込んで、「キレイめ」「姫系」「サーフ系」「モード系」といった多種多様なスタイルを生み出しました。

このころ女性に好まれたブランドが「CECIL McBEE」「ALBA ROSA」「EMODA」そして「ANAP」でした。

しかし、2000年代に入ると勢いは失われます。1995年に創刊した雑誌「egg(エッグ)」はギャルブームをけん引したバイブルの一つでしたが、2014年に休刊しました。同じく1995年に誕生した「Cawaii!(カワイイ)」も2009年に休刊しています。

2014年8月期にANAPの売上高は前期比3.0%増の88億4,400万円となり、2013年11月上場後のピークを迎えますが、そこからは8期連続の減収となります。2023年8月期が予想通り着地すると、9期連続の減収です。売上高は半分ほどにまで縮小しています。

※決算短信より筆者作成

ANAPの特徴に多品種小ロットがありました。一つの商品の好調・不調が、売上全体に影響しづらいという経営上のメリットがあります。消費者にとっては、他の人と着ているものが一緒という分の悪さを避けることができました。

しかし、主戦場がEC(電子商取引)へと移行してデメリットが目立ち始めます。膨大な商品点数を管理し、宣伝用の撮影を行ってそれぞれの商品にキャッチコピーをつけるのは大変な手間がかかるのです。

ANAPは「再生プロジェクト」を立ち上げて多品種小ロットビジネスからの転換を図りました。2016年8月期に不採算店を17店舗退店するなど、収益力の改善に努めます。その効果が出て2017年8月期からは営業利益が出るようになりました。

ところが、コロナ禍を迎えて主力となる店舗売上が減少。3期連続で営業赤字を計上しました。

ピアズから見放されて経営危機に

コロナ禍以降、収益改善が見込めないANAPは、2022年10月にDX支援などのコンサルティングサービスを提供するピアズと資本業務提携を行います。ANAPは同年7月に大阪府で開催されたNFT展示会に出展し、ANAPの二次創作作品を展示するなど、メタバース領域にいち早く参入したファッションブランドでした。

ピアズとの資本提携により、インターネット販売事業による収益効果の増大、メタバース事業の促進を図ろうとしていました。

このとき、普通株式50万株をピアズに新規で割り当て、1億6,700万円を調達しています。新株予約権も同時に発行し、総額で7億円弱を調達。広告宣伝費などに充当する計画でした。

ANAPの株式は2022年10月ごろは300円台後半で取引されていました。しかし、2023年4月に債務超過に陥ったことがわかると、株価は300円を下回る日が続きます。

ANAPはピアズに割り当てた新株予約権を2023年6月に取得して消却。更にピアズとの資本業務提携契約を解消し、保有していた普通株式の全てをネットプライス(東京都港区)に譲渡しました。

ネットプライスはECプラットフォームを展開する会社。ANAPは同社と資本業務提携契約を締結しました。ネットプライスから取締役を1名派遣し、定時株主総会にその候補者を含んだ取締役選任議案を上程する予定です。

ANAPは今期7億円以上の純損失を見込んでいるため、増資や新株予約権の発行による資金調達は避けられないでしょう。増資をネットプライスが引き受けるとすれば、支配力・影響力が強まります。ECのノウハウに長けた企業とタッグを組むことにより、会社を成長軌道に乗せることができるのか。注目が集まります。

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