飲食店向け配膳ロボ会社が経営危機、3期連続赤字で債務超過に

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※画像はイメージ

飲食店向けの配膳ロボットや経営管理システムを提供するアルファクス・フード・システム<3814>が、2022年9月期に5億9,800万円の純損失を計上しました。これで3期連続の赤字となり、4億2,000万円の債務超過に陥りました。

同社は2020年9月期にシンジケートローン契約の財務制限条項に抵触。有価証券報告書に継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象、いわゆるGC注記が記載されていました。債務超過への転落で経営危機に拍車がかかりました。

2022年5月から半導体不足でメイン機器の入荷ができなくなり、全製品売上ゼロという前代未聞の出来事に見舞われています。この記事では以下の情報が得られます。

・アルファクス・フード・システムの業績
・業績不振の理由

MSワラントで8億円を調達

アルファクス・フード・システムは、飲食店向けに売上分析、勤怠管理、在庫管理、受発注処理などを行うシステムを提供するほか、配膳ロボットやセルフレジの提供などを行っています。

新型コロナウイルス感染拡大以降、配膳ロボットの引き合いは強く、福岡空港内のレストラン「SORAGAMIAIR(ソラガ・ミエール)」や銚子丸<3075>の「江⼾前すし百萬⽯」、北海道の和食レストラン「ふく亭グループ」などに導入されています。

※事業計画及び成長可能性に関する事項より

アルファクス・フード・システムは、コロナ禍の2020年9月期に売上高が前期比41.8%減の12億9,100万円まで落ち込みました。飲食店の営業自粛や時短対応の影響を受け、主力となるシステムの稼働が低下。大幅な減収となりました。

更に、2020年6月に配膳ロボットのレンタルサービスを本格化しましたが、これと同じタイミングで国内の飲食チェーンのロボットに対する需要が急増。コロナ禍で航空便や船便の輸送がストップした影響も受け、部品や製品の調達ができなくなりました。配膳ロボットを納品できなかったことも売上減の要因の一つです。

※決算短信より

2021年9月期に売上高は前期比21.8%増の15億7,300万円まで回復するものの、赤字から脱することはできませんでした。このタイミングで自己資本比率は2.0%から1.4%まで低下。債務超過寸前となりました。

アルファクス・フード・システムは、2021年12月に日本政策金融公庫から資本性のある劣後ローンで4億円を調達。10年間の満期一括弁済で、無担保無保証という救済措置を受けました。

更に行使価額修正条項付新株予約権(MSワラント)を、オーストラリアに本社を置く金融機関マッコリー・バンク・リミテッドなどに割り当てました。すべて行使された場合、8億円余りが調達できる計画。なりふり構わない手段で資金調達を重ねました。

2022年9月期は外食産業全体が回復してシステムの稼働が高まり、配膳ロボットも計画通り導入できる見込みだとして、当初は売上高を前期比84.4%増の29億円、1億7,800万円の純利益との予想をしていました。

しかし、売上高は予想を53.9%下回る13億3,600万円、5億9,800万円の純損失で着地します。

上場維持基準の時価総額40億円を大幅に下回る

アルファクス・フード・システムは、2016年12月にみずほ銀行(東京都千代田区)をアレンジャーとする銀行団に対し、合計11億円のシンジケートローン契約を締結しています。現在、この契約の財務制限条項の2つに抵触しています。

1.各年度の純資産を2016年9月期の8割以上を維持すること
2.経常利益が2期連続して損失とならないこと

通常、2023年12月29日の満期を迎える前に返済しなければなりませんが、協議の上で権利行使をしないことで合意が得られました。

ただし、財務制限条項に抵触したことで2020年9月期の有価証券報告書からGC注記が付いています。これにより、資金調達手段の制限を受けるだけでなく、新規顧客の開拓をしづらい状況に追い込まれ、場合によっては既存顧客との取引継続が難しくなっている可能性もあります。

債務超過、GC注記で上場廃止が視野に入りますが、アルファクス・フード・システムは別の問題も抱えています。それがグロース市場上場維持基準の時価総額。時価総額は40億円以上が求められていますが、2023年1月4日時点で同社の時価総額は9億7,000万円。MSワラントを発行してから株価は著しく下落しています。

追加でMSワラントを発行することになれば、更なる株価と時価総額の低下が避けられません。手詰まりの状況に追い込まれているようにも見えますが、アルファクス・フード・システムは本業の回復で債務超過を解消するとしています。

2023年9月期の売上高は前期比117.1%増の29億円、1億2,900万円の純利益(前年同期は5億9,800万円の純損失)を予想しています。納品できなかった配膳ロボットや店舗システム機器の導入が進み、売上高が大幅に回復する見込みだと説明しています。しかし、同社は2022年9月期のスタート時も同様の説明をしていました。

■2022年9月期減収要因のコメント

※決算説明資料より

蓋を開ければ、半導体不足で製品の供給は滞って減収となり、期首の予想の半分にも満たない状態での着地となりました。

配膳ロボットやシステム機器の受注残高がどれほどあり、納品がどれだけ進むのか。アルファクス・フード・システムは、そうした具体性のある説明に欠けており、業績予想の精度がどれだけ高いのかがわかりません。黒字予想を出しても株価が上がらない要因に、投資家への説明が欠けていることがあると考えられます。

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