人気アパレル「WEGO」を買収した投資ファンドJ-STARとは

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中高生を中心に人気のアパレル「WEGO」

J-STAR(本社:東京都千代田区)は、中小企業の投資に強みを持つ独立系プライベート・エクイティファンドです。2006年2月設立で、1号ファンドは120億円、2号ファンドは204億円を運用しています。2017年5月に募集が完了した3号ファンドは325億円が集まりました。順調に規模を拡大しています。

2020年1月には新規事業立ち上げ支援のエムアウト(東京都港区)の子会社ギノ(本社:東京都港区)のMBO支援の契約を締結。ITエンジニアの求職や学習プラットフォーム「paiza」の拡大に寄与します。

中小企業の持つ課題を解決して事業の成長を促すJ-STARとは、どのような投資ファンドなのでしょうか。

この記事では以下の情報が得られます。

・J-STARの投資実績
・WEGO買収の詳細

36件のうち13件をエグジット済み

J-STARはジャフコ<8595>のメンバーが中心となって立ち上げました。代表取締役の原禄郎氏は慶応大学法学部を卒業後、日本長期信用銀行に入行。LBOやプロジェクトファイナンスに従事してから、リーマンブラザーズでM&Aやバイアウト投資に関わっていました。その後、ジャフコでITやサービス業などのバイアウト投資を手掛けています。

立ち上げには、原氏の他に原田健一氏(取締役パートナー)、櫻井秀秋氏(取締役パートナー)、湯本達也氏(パートナー)の3名が関わりました。現在、創業メンバーも含めて22名が在籍しています。

案件規模は10億~30億円。参入障壁の高い技術力を持つ製造業やIT、強力なブランド力を持つサービス業、メディア、小売りやヘルスケアなど横展開が可能な事業への投資に強みを持っています。保有期間は3年~7年。IPOよりも事業会社への譲渡を得意としています。

【投資実績】

投資時期 企業名 事業内容 エグジット
2020年1月 paiza株式会社 ITエンジニア教育、人材紹介 -
2019年11月 新日本開発株式会社 産業廃棄物中間処理事業(焼却炉) -
2019年10月 ぺリプラス株式会社 ライフスタイル系ウェブメディア -
2019年5月 東京音響有限公司 イヤホン及び音響関連製品の開発製造 -
2019年5月 中井工業株式会社 真空蒸着、コーティング総合メーカー -
2018年9月 株式会社ウィゴー ヤング向けアパレル・雑貨等の輸入・製造・販売 -
2018年8月 株式会社アーネスト 自動車リビルド部品、優良部品の製造 -
2018年1月 株式会社横井製作所 消火器具の開発・製造・販売 -
2018年1月 ハリタ金属株式会社 一般廃棄物及び産業廃棄物の収集・運搬・中間処理、再生資源加工及び販売 -
2018年1月 株式会社itty 健康・美容関連商品、化粧品通販 -
2018年1月 株式会社セクションエイト 飲食店企画・運営 -
2018年1月 株式会社三和サービス 自動車及び自動車用品の販売、修理 -
2017年12月 株式会社越後屋 和食チェーン店 -
2017年12月 株式会社ジェーシーインターナショナルトレード 衣料・雑貨等の小売 -
2017年9月 株式会社サンスマイル 化粧品・美容雑貨等の販売 -
2017年5月 株式会社アルファコーポレーション 教育事業・家庭教師派遣 -
2017年4月 JVCC株式会社 動物病院・ペットサロン運営 -
2016年10月 株式会社アシロ メディア運営 -
2016年2月 株式会社アイセイ薬局 東名阪中心の調剤薬局 2017年12月株式会社アイセイホールディングスに譲渡
2016年1月 株式会社プラティア 認知症グループホームを主体とする各種介護サービス -
2015年12月 株式会社エスコ 省エネ・省コスト製品及びサービスの導入・保守・運用 -
2015年6月 株式会社NHS 保険代理店事業及び保険募集事業 -
2014年11月 ナースコール株式会社 難病患者の終末期ケアに特化した訪問看 護・介護サービス 2019年3月東証マザーズに上場
2014年4月 国上精機工業株式会社 自動車内装用樹脂パネル品製造 -
2013年10月 株式会社プリマジェスト イメージ情報ソリューション領域のシステム開発及び受託事業 2017年7月オリックス株式会社に譲渡
2013年7月 東海トリム株式会社 四輪車用シートカバー製造 2019年8月株式会社レンブラントホールディングスの関連会社に譲渡
2012年5月 株式会社スリーアローズ ペット用品、ペット食品製造販売及び輸出入 2017年9月クレアシオン・キャピタル株式会社に譲渡
2011年9月 株式会社バーンリペア 建材の補修、住宅アフターサービス代行 -
2011年5月 太平洋精機株式会社 建設機械部品製造 2017年12月株式会社テーケーワイに譲渡
2011年4月 株式会社HCM 介護サービス、家事代行サービス 2014年10月綜合警備保障株式会社に譲渡
2010年9月 アポプラスステーション株式会社 CSO事業 2012年10月クオール株式会社に譲渡
2009年6月 いきいき株式会社 出版事業・通販事業 2012年9月ノーリツ鋼機グループに譲渡
2009年6月 株式会社オリーブ・デ・オリーブ 婦人服企画製造卸及び販売 2013年2月瀧定大阪株式会社に譲渡
2009年2月 TSS株式会社 特殊プリント基板の開発・試作・製造 2016年3月関西電子工業株式会社に譲渡
2007年9月 株式会社十勝 和菓子製造・小売業 2013年11月株式会社メディアフラッグに譲渡
2006年11月 株式会社エコスファクトリー 廃プラスチック(容器包装その他プラスチック)のリサイクル事業 2008年6月株式会社サイクルワンに譲渡

公式ホームページの情報を基に筆者作成

「paiza」はITエンジニアの求人に特化したプラットフォームの提供をしています。オンライン上でプログラム言語の学習動画の公開も行っています。内閣府はAIなどの先端IT人材は5万人の不足、IT人材は30万人不足すると予測しており、「paiza」のようなプラットフォームは成長余地が高いと考えられます。

2014年に買収したナースコール(本社:愛知県名古屋市)は、2019年3月にマザーズに上場(日本ホスピスホールディングス<7061>)しました。ホスピスの運営や訪問看護・介護事業で市場の期待は高く、公募価格1,000円に対して初値は1,466円(公募価格比46.6%増)をつけています。

外食では2018年にセクションエイト(本社:東京都渋谷区)に投資をしています。セクションエイトは、男女の出会いを創出するエンタメ居酒屋「相席屋」を運営しています。最近では「The Public stand」という新業態を立ち上げました。見知らぬ男女が入れ代わり立ち代わり自由に会話ができる時間無制限飲み放題のバーです。ニッチな市場を押さえる戦略は、J-STARの得意とするところです。

社長と大株主が3度交代したWEGO

2018年に買収したウィゴー(本社:東京都渋谷区)は、2018年2月期の売上が367億円。店舗数は191で、社員数2,500の中堅企業です。1994年に創業者の中澤征史氏が、大阪のアメリカ村で古着ショップを立ち上げたことが始まり。劇場型の店づくりや有名芸能人とのコラボ企画で若者の支持を得ました。

2017年8月に中澤氏が投資会社「オーチャードコーポレーション」に株式を売却。オーチャードの社長・伊藤忠寛氏がウィゴーの新社長に就任しました。中澤氏は取締役のつかない会長職に退きました。この突然の会社の売却は世間を驚かせます。

しかも、そのわずか3か月後の11月にアラタマコーポレーション(本社:愛知県名古屋市)がウィゴーの株式を取得したのです。同社はブラザー工業<6448>の創業者の資産管理会社。アラタマコーポレーションは米国公認会計士の資格を持つ高橋英朗氏を新社長として招聘しました。中澤氏は取締役会長となります。

中澤氏がオーチャードに株式を売却したころ、ウィゴーの成長は2%前後まで鈍化。中澤氏個人が、会社の調達資金の連帯保証人になるなど負担が重くなっていました。中澤氏は上場を視野に入れてオーチャードに協力を求めたのです。

しかし、ウィゴーの金融機関などがオーチャードの経営体制や信用力に疑問を持つようになり、中澤氏はアラタマと協力して株式を買い戻しました。

その翌年にJ-STARが買収したのです。ウィゴーの社長には事業部長だった園田恭輔氏が就任しました。園田氏は販売員からスタートし、店長、エリアマネージャー、物流、販促まで経験した現場たたき上げの人材です。

J-STARのもとで再出発したウィゴーは、売上重視で出店攻勢を強めていた戦略を改め、利益重視の慎重な経営姿勢をとるようになっています。

麦とホップ@ビールを飲む理由