インテリアショップFrancfrancに出資した日本成長投資アライアンスとは

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本社がある虎ノ門グローバルスクエア

2021年7月にセブン&アイ・ホールディングス<3382>が、グループ傘下のFrancfrancの株式の一部を売却すると発表しました。株式を取得したのが、投資ファンド・日本成長投資アライアンス(東京都港区)です。日本成長投資アライアンスはECチャネルの強化とDXによる生産性の向上により、Francfrancの企業価値を高めるとしています。

この投資ファンドは日本たばこ産業<2914>と博報堂DYホールディングス<2433>がアライアンス・パートナーとなっており、業界でも珍しい形態をとっています。日本成長投資アライアンスとはどのような会社なのでしょうか?この記事では以下の情報が得られます。

・日本成長投資アライアンスの概要、投資先
・Francfranc買収の歴史

380億円の資金を集めた2号ファンド

日本成長投資アライアンスは2016年6月に設立されました。1案件当たり10~30億円の出資を想定しており、日本の中堅・中小企業を中心としています。1号ファンドである「J-GIA 1号投資事業有限責任組合」は2018年6月に総額173億円を集めて募集を完了。静岡銀行<8355>やふくおかファイナンシャルグループ<8354>が出資をしています。2号ファンドとなる「J-GIA2号シリーズファンド」は1号ファンドの投資家を中心に資金を集め、380億円で2020年11月に募集を締め切りました。

日本成長投資アライアンスの最大の特徴はJTと博報堂とのアライアンスです。JTはファンドの出資先に対して経営管理や品質管理、人材派遣を含む経営支援を行い、博報堂はマーケティング、広報、サービス開発をバックアップしています。

JTは2007年7月に買収額2兆2,000億円という英ギャラハーの巨額M&Aを手掛けました。そのほか、「加ト吉」のテーブルマーク(東京都中央区)、スーダンやベルギー、ドミニカ共和国のたばこ会社を買収するなど、国内外の豊富なM&A経験があります。博報堂はブランド構築やマーケティングに強みのある会社です。経営管理やマーケティングのノウハウをその道のプロに任せることができます。日本成長投資アライアンスはその名の通り、投資先の成長とアライアンスを重視した会社だと言えます。

この投資ファンドの経営諮問委員会の一人にJTの新貝康司氏がいます。新貝氏はJT International副社長兼CEO時代にギャラハーの買収を指揮しました。2009年9月まで同社のCFOも兼務した経営管理やファイナンス、M&Aのスペシャリストです。

日本成長投資アライアンスの代表取締役社長は立野公一氏。1974年生まれで1998年4月にメリルリンチ証券に入社した後、1999年4月にコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンに移りました。2005年2月にゴールドマン・サックス証券、2007年2月にユニゾン・キャピタルに入社しています。ユニゾン時代には当時出資をしていたスシローの取締役も務めました。2016年6月に日本成長投資アライアンスを立ち上げました。2017年10にはマネックスグループ<8698>の執行役CIO(投資事業担当)も務めています。

日本成長投資アライアンスの業績は以下のように推移しています。

■純利益推移(単位:百万円)

2016年11月期 2017年11月期 2018年11月期 2018年12月期 2019年12月期 2020年12月期
純利益 -2 16 60 2 19 75

決算公告より筆者作成

出資先には、2020年4月に負債総額160億円で経営破綻したWBFホテル&リゾーツの傘下で、沖縄および九州のホテル運営をするWBFリゾート沖縄(現:リゾーツ琉球 沖縄県豊見城市)が含まれます。再生スポンサーとして名乗り出ました。

■投資先一覧

会社名 事業内容 投資時期
株式会社ホソヤコーポレーション 中華系チルド食品の製造販売 2021年11月
株式会社Francfranc インテリア・雑貨小売販売 2021年8月
リゾーツ琉球株式会社
(旧WBFリゾート沖縄株式会社)
ホテル運営会社 2020年10月
株式会社WOW WORLD
(旧株式会社エイジア )
マーケティング支援SaaS企業 2020年6月
シロカ株式会社 白物家電の企画販売会社 2019年12月
株式会社property technologies
(旧株式会社ホームネット ホールディングス)
テクノロジーを活用した中古住宅流通プラットフォーム事業 2019年7月
株式会社セフィーヌ 化粧品企画販売会社 2019年6月
プロフレックス株式会社 油圧ホース・金具の製造販売 2019年1月
株式会社キノファーマ 低分子薬開発企業 2018年9月
株式会社ポテトかいつか さつまいも専業の食品会社 2017年4月

ホームページの情報をもとに筆者作成

セブン&アイ・ホールディングス傘下に入っても赤字脱却できず

家具
※画像はイメージ(Photo by Pexels)

Francfrancは1992年7月に天王洲アイルに1号店を出店したインテリア・雑貨ショップです。運営はバルスが行っていました。バルスは2002年7月にジャスダックに上場、2006年1月に東証1部に指定替えとなりました。バルスは2008年の世界金融危機以降の消費低迷に苦しみ、2011年1月期まで2期連続の営業赤字に陥っていました。当時の代表取締役社長髙島郁夫氏が、機動的な構造改革が必要不可欠と判断。TMコーポレーションを設立してTOBを実施しました。MBOによる非上場化です。大株主だった三菱商事<8058>から賛同を得て、2012年1月に上場廃止となりました。その年の4月にTMコーポレーションは再びバルスに商号変更しました(バルスは2017年9月にFrancfrancに商号変更)。

2013年12月にセブン&アイ・ホールディングスがバルスとの資本業務提携契約の締結を発表します。セブン&アイ・ホールディングスはバルスの第三者割当増資を引き受け、30.00%の株式を取得。同じタイミングでバルスの親会社であるBALS INTERNATIONAL LIMITEDの株式26.67%を三菱商事から取得しました。これにより、セブン&アイ・ホールディングスの間接保有を含む保有割合は48.67%となりました。

セブン&アイ・ホールディングス傘下の西武百貨店、そごう、イトーヨーカ堂などのショッピングセンターにFrancfrancを出店し、相互集客に繋げる狙いがありました。

しかし、Francfrancは2017年8月期から一度も利益を出していません。更に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年8月期は12億7,900万円もの純損失を計上しました。

■Francfrancの業績推移(単位:百万円)

2017年8月期 2018年8月期 2019年8月期 2020年8月期
純利益 -407 -838 -10 -1,279

決算公告より筆者作成

セブン&アイ・ホールディングスは、保有する株式の25%程度を日本成長投資アライアンスに売却。売却後の保有比率は23.5%となりましたが、Francfrancは引き続きセブン&アイ・ホールディングスの持分法適用会社となります。日本成長投資アライアンスはFrancfrancに51%を出資。3年以内の再上場を目指すとしています。

かつて大塚家具(東京都江東区)がお家騒動でもめていた際、当時の社長だった大塚久美子氏が打ち出した成長戦略の一つが家具の中価格帯への参入でした。家具はCASSINAのような高価格帯の需要は安定しており、低価格帯でIKEAやニトリが激しい競争を続けています。中価格帯には「ACTUS」といったブランドがあるものの、店舗数は少なく一般的な認知は獲得できていません。大塚家具は中価格帯を欲している消費者が、低価格帯に流出していると読んだのです。すなわち、中価格帯のマーケットは空白地帯であり、ビジネスチャンスがあると判断しました。

Francfrancは正に中価格帯のマーケットを狙えるブランドです。博報堂とJT、そして日本成長投資アライアンスの支援を得て、Francfrancが再び成長力を取り戻すのか、注目が集まります。

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