安倍晋三首相が2018年4月17日から20日にかけて訪米し、日米首脳会談に臨む。拉致問題、関税問題など日本にとっては課題山積といってよい今回の会談。海外では現在のところ、首相の訪米決定を伝えるのみのメディアが多いが、独自の論調を展開している米ブルームバーグと韓国ヘラルドの記事を紹介する。
「トランプの対日本ツインブロー、安倍首相の『魅力攻勢(charm offensive)』の限界を試す」
これは、同年3月22日の米ブルームバーグのタイトルである。記事は安倍首相が自身のカリスマ性を強調して支持者をひきつけようとする政治スタイル(魅力攻勢)を、森友問題による支持率急落にまでふみこんで報じたもの。今回の訪米については「トランプ大統領の方針転換によろめく安倍首相、ワシントンへの旅を計画」と紹介している。
同記事の概要は次のとおり。
■トランプ大統領の2大サプライズは安倍首相にとって「めまい」
・大統領自身が、これまでの「共通の敵」金正恩と会談すること
・鉄鋼とアルミの、日本への関税賦課
これら2つの方針転換は、米共和党や市場のみならず、昨年11月にトランプ大統領を歓待した安倍首相にめまいをもたらした。安倍首相は、気前のよいプレゼントやゴルフラウンドなど、トランプ大統領との個人的なつながりを築きあげる努力を重ねてきたからである。
■米・北朝鮮会談に動揺する、平和国家日本
人気に不安を隠せないトランプ大統領は、11月の議会選挙を前に政府要人を交代させ、より破壊的な政策アプローチへ向かっている。日本を射程に入れる短・中距離弾道ミサイルの放棄を約束することなく金正恩とオープントークすることは、米日同盟関係の基礎を揺るがすものである。しかし、日本は米国との同盟関係を弱めるゆとりはない。中国の存在があるからだ。日本はヨーロッパ諸国以上に安全保障上の脅威にさらされているわけだが、平和国家を公称している以上、安倍首相に選択の余地は少ない。
■対日貿易赤字への不満を公言したトランプ大統領
他方、金属関税からの除外に関する、安倍首相の懇願は、これまでのところ無視されている。トランプ大統領自身が22日、安倍首相の「微笑み」を「アメリカをこれまでこんなに利用できていたとは信じられないという笑み」と表現し、「こういった時代は終わりだ」と不満をあらわにした。 これらの動きは、70年間の協調関係を支える貿易と安全保障の柱を揺るがすおそれがある。トランプ大統領との個人的なつながりの限界を、安倍首相は今、学び、それが4月のワシントンへの「急ごしらえの旅」へとつながっている。
日米首脳会談に先立ち、4月上旬に河野太郎外相が韓国を訪れ、4月27日の韓国・北朝鮮会談で拉致問題を取り上げるよう要請すると伝えられている。同国の経済紙コリアヘラルドは4月3日に以下の記事を掲載した。
「雪解け進む諸国動向に、途方に暮れる日本。乗り遅れまいと奮闘する安倍首相」
同記事の概要は次のとおり。
■日本は米主導の対北朝鮮キャンペーンの最前線にいた。そして最近の北朝鮮の平和攻勢についても核計画を完成させる時間稼ぎと非難し、懐疑的だった。しかし平昌オリンピックへの北朝鮮参加後、南北の雪解けや国際的な対話は早いペースで進んでいる。これは日本を途方に暮れさせたように見える。
■安倍首相はトランプ大統領の金正恩との会談を、あらかじめ知らされていなかったともいう。中国と金正恩との会談についてもニュースで知ったという。外交ゲームの中で日本の疎外化はさらに進んでいるといってよい。短・中距離ミサイル保有問題と拉致問題は安倍首相にとって重要な課題だ。日本のフラストレーションは高まっている。
米ブルームバーグも韓国ヘラルドも、北朝鮮をはじめとするこの数か月のめまぐるしい世界動向から日本がとり残されていることを指摘。4月17日からの訪米は、蚊帳の外に置かれた安倍首相が、キーマンであるトランプ大統領との個人的な親しさを頼みの綱として、ワシントンに出向くものと、足並みのそろった論調を示しているといえる。
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http://www.koreaherald.com/vie...
文:Yuu Yamanaka/編集:M&A Online編集部