緊急事態宣言でUSJは休業、TDL・TDSは営業の「なぜ」?

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2021年4月25日、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の第4波に伴う緊急事態宣言が出て、関東・関西のレジャー施設は書き入れ時のゴールデンウィークを失うことになった。

緊急事態宣言の「死角」

大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や東京のサンリオピューロランド、よみうりランドなどは、5月11日まで臨時休業する。ところが、わが国最大の集客数を誇る東京ディズニーランド・ディズニーシーは営業を継続している。なぜ、そうなったのか?

緊急事態宣言下の大阪府にあるUSJはGWの商機を逃す(Photo by sean)

緊急事態宣言は都道府県単位で出される。よって大阪府内にあるUSJや、東京都内のサンリオピューロランド、よみうりランドには休業要請が出されたが、千葉県浦安市にある東京ディズニーランド・ディズニーシーは「対象外」なのだ。

とはいえ、千葉県といえども東京ディズニーランド・ディズニーシーは東京都に隣接しており、東京駅から休業しているサンリオピューロランドやよみうりランドまでは鉄道で1時間程度かかるが、東京ディズニーランド・ディズニーシーへはわずか13分。制度の「死角」と言うしかないが、首都圏住民の「生活感」からすれば違和感を禁じえない。

東京都内のテーマパークや遊園地は休業しており、東京ディズニーランド・ディズニーシーに首都圏のレジャー客が殺到する可能性はある。ただ、千葉県は市川市、船橋市、松戸市、柏市、浦安市を「まん延防止等重点措置」区域としており、浦安市にある東京ディズニーランド・ディズニーシーは1日の入場者数を5000人に制限。営業時間を午後8時までに短縮し、酒類の提供も中止した。

東京隣県の商業施設は宣言初日から混雑

入場者をコントロールできるテーマパークはいいが、「出入り自由」な大型商業施設ではそうはいかない。横浜市や川崎市の大型商業施設や中心商店街では、緊急事態宣言が出た初日の4月25日に東京からと思われる客や、一斉休業で東京へのショッピングを諦めた県内客らでごった返した。

緊急事態宣言で休業中の東京から他県へ顧客が流れる?(川崎市の「ラ チッタデッラ」、同社ホームページより)

ドコモ・インサイトマーケティング(東京都豊島区)の位置情報データ解析によると、25日午後3時台の人出は銀座で前日曜日(18日)に比べて32%も減少するなど、デパートをはじめ大型商業施設が休業した東京都心への流入は大幅に減っている。その一部が周辺の大型商業施設や中心商店街へ流れたようだ。

緊急事態宣言で大阪府、兵庫県、京都府と周辺大都市圏を広くカバーした近畿地方では、こうした事態は起こりにくい。一方、東京都だけをピンポイントで指定した関東では、周辺地域との「ピンポン感染(互いにうつしたりうつされたりを繰り返すこと)」の懸念が広がっている。

東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県は、ほぼ全域が通勤・通学圏であり、レジャーやショッピングで行き来する生活圏でもある。東京都だけを対象としたことにより、周辺3県の商業・レジャー施設への人の流れが集中すれば、コロナ感染は東京都を含む全域に拡散する。

むしろ東京都に緊急事態宣言を出さずに、1都3県全体でレジャー客や買い物客を分散して受け入れた方がコロナ感染の拡散リスクは低いかもしれない。地元自治体からの要請が前提とはいえ、昨年4月の第1次緊急事態宣言並みの幅広い業種での休業要請を伴う今回の緊急事態宣言の場合、少なくとも1都3県で足並みを揃える必要があっただろう。

文:M&A Online編集部