セブン&アイ・ホールディングス(HD)による傘下の百貨店「そごう・西武」の売却は当初予定の今年2月から延び延びになり、すでに6カ月以上。売却に反発する労働組合は西武池袋本店(東京都豊島区)などでストライキの構えを見せている。目下、9月入りに合わせて売却を完了させたい意向とされるが、果たしてゴーサインを出せるのか。
セブン&アイは2021年7月に策定した中期経営計画で事業構造改革の完遂を掲げ、成長性の乏しい事業は売却する方針を打ち出した。その最大の標的となっていたのが業績不振が続く百貨店「そごう・西武」だ。
米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに2000億円超で売却することになったと発表したのは昨年11月。売却完了予定は今年2月1日だったが、「3月中」に日程を延期。「3月中」を断念した後は鋭意交渉中とし、売却期限を示せないまま、時間だけが経過していた。
こうした中、セブン&アイは8月25日に臨時取締役会を開き、そごう・西武の売却を最終的に決議する予定だったが、急きょ取りやめた。2月期決算のセブン&アイは8月末で上期(3~8月)を終えるため、かねて上期中の決着を模索してきたが、労使の合意にほど遠いことが改めて露呈した形だ。
売却後、旗艦店の西武池袋本店などに家電量販店「ヨドバシカメラ」の出店が計画されており、雇用維持や百貨店事業そのものへの影響を懸念する労組と溝は埋まっていない。
そごう・西武の労組は交渉が決裂すれば、8月31日にも西武池袋本店などでストライキを実施する方向で検討中だ。労組は7月に組合員の賛成多数でスト権を確立し、いつでも実力行使に出られる状態にある。
では、親会社のセブン&アイがそごう・西武の売却を白紙に戻すことはあるのか。答えは「ノー」だ。労組との対立はあるにせよ、これを理由に売却自体を取りやめることは考えにくい。
仮に売却を中止した場合、相手方(買い手)にペナルティーとして多額の違約金支払いが予想されるうえ、セブン&アイの成長戦略は根底からリセットを迫られる。井阪隆一社長ら経営陣の責任が問われるのは必至だ。
セブン&アイは9月1日にも売却手続きを完了させたい意向とされる。となれば、8月31日までに取締役会で売却を最終的に決議する必要がある。
強行突破を図るのか、労組がストで応戦するのか。果たして、着地点があと数日の間に見いだせるのか。そごう・西武の売却劇は最大の山場を迎える。
セブン&アイは2023年2月期決算で日本の小売業として初めて売上高10兆円を突破(35%増の11兆円8113億円)し、最終利益も33%増の2809億円で過去最高を記録した。好調なコンビニ事業が業績を牽引し、スーパー(イトーヨーカドー)事業、百貨店事業の不振を補った。
最終損益はスーパー事業が3年連続赤字、百貨店事業が4年連続赤字。百貨店事業を切り離す一方、グループ内に残すスーパー事業は祖業の衣料品事業からの撤退、国内店舗2割削減などを柱とする構造改革を推し進めている。
文:M&A Online