収束には程遠い!緊急事態宣言解除でも「コロナ不況」3つの懸念

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26日から正常化に向けて動き出す日本経済だが…

政府は2020年5月25日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言について、最後まで残っていた東京など首都圏の1都3県と北海道での解除を決めた。

26日から経済活動も正常化に向けて動き出すが、不安は残る。それどころか、不況リスクが高まっているといえるだろう。なぜ、首都圏を含む全国で宣言が解除されても「安心」できないのか?

(1)事実上「先延ばし」された宣言解除

東京都は同26日から経済活動の自粛要請を3段階で解除していく。ステップ1は早ければ1週間程度で同2へ移行し、感染状況などを踏まえて同3、全面解除へと進む。

ステップ2から同3、同3から全面解除へは、概ね新型コロナウイルス感染症の潜伏期間である2週間をめどにステップアップするとみられる。

そうなると、当初予定されていた5月末までの自粛期間が短縮されるのは、博物館や図書館、学校など民間ビジネスと関係の薄いものばかり。

ステップ2の運動施設や学習塾、劇場、集会場、生活必需品以外の小売店などは、当初予定通りのスケジュールで自粛が終わりそうだ。逆に言えば「早期解除」の恩恵は受けない。

問題はステップ3以降に自粛解除となる漫画喫茶やパチンコ店、ゲームセンター、遊園地、それ営業時間が午前0時までに延長される飲食店などだ。

「5月末まで我慢すれば、営業を正常化できる」と期待していたこれらの業種にとっては、およそ半月にわたって緊急事態宣言が延長されるのと同じ状況になる。

さらにスポーツジム、接待を伴う飲食店、ライブハウス、カラオケ店に至っては、事実上、緊急事態宣言が1カ月延長され、休業が3カ月間にも及ぶことになる。

どの業種も同じだが、自粛を緩和したら直ちに客足が戻るわけではない。体力のない事業者は、事実上の「宣言延長」に追い詰められる。緊急事態宣言が解除されたにもかかわらず、倒産や廃業が多発することになるだろう。

東京都の自粛解除・緩和ロードマップ
ステップ 予定日 自粛要請が解除・緩和される業種
5月26日 博物館や図書館、観客席を除いた屋内の運動施設、学校(段階的に緩和)など。飲食店の営業時間は午後10時まで2時間延長。イベントは50人まで。
5月30日 運動施設、学習塾、劇場、集会場、生活必需品以外の小売店など。飲食店の営業時間は午後10時まで(延長なし)。イベントは100人まで。
6月13日 漫画喫茶、パチンコ店、ゲームセンター、遊園地など。飲食店の営業時間は深夜0時まで2時間延長。イベントは1000人まで。
全面解除 6月27日 スポーツジム、接待を伴う飲食店、ライブハウス、カラオケ店など。1000人を超えるイベント。「緊急事態宣言」発出以前の状態に戻る。

(2)オフィスの一斉「正常化」で感染再燃か

多くのオフィスでは同26日から正常業務を再開する。そうなれば東京はじめ首都圏は再びオフィスワーカーの通勤ラッシュとなり、落ち着いていた新型コロナ感染が再燃する可能性もありそうだ。

日本では約1万7000人の新型コロナ感染者が発生し、うち約1万3000人が回復している。一方、回復したにもかかわらず、その後の検査で再び陽性になった新型コロナウイルス感染者が、5月8日時点で全国に少なくとも31人いることも判明した。

検査件数が少ない日本では、感染者数が公表数よりも多いと指摘されている。感染者には無症状者も多いとされるだけに、統計上の感染者は少なくても再発者も含めて潜在的な保菌者は相当数にのぼるだろう。

ライブハウスのような小規模な密閉空間でもクラスター(感染者集団)が発生したことを考えれば、ほぼ満員で運行本数も多い首都圏の通勤列車がもたらすクラスターの規模は想像を絶する。

すでに北海道では一旦収まった感染拡大が再燃しているが、首都圏で同様の「揺り戻し」が起これば、新たな緊急事態宣言を出さざるを得ない状況に逆戻りだ。当然、日本経済は破壊的な打撃を受けることになる。

(3)「第2波」リスクで経済が萎縮

「揺り戻し」の感染拡大が起こらなかったにしても、新規投資や雇用、一般消費の伸び悩みは続くだろう。秋以降の「第2波」に対する警戒感が残るからだ。

1918年1月に発生したスペイン・インフルエンザ(スペイン風邪)によるパンデミックは、1920年12月までの丸3年も人類を苦しめた。新型コロナウイルスが、この時のインフルエンザと同様の流行をするかどうかは分からない。

しかし、少なくとも2021年春までの1年間は、企業や個人も投資や雇用、新規購入に慎重な姿勢を崩さないだろう。その結果、経済成長は阻害され、倒産や失業者が増えて物価も下がる。2008年に起こったリーマン・ショック以来の世界同時不況は避けられない。

緊急事態宣言が首都圏を含む全国で解除されたからと言って、決して楽観できる状況にはないのだ。

文:M&A Online編集部