洋菓子のヒロタが上場廃止カウントダウン、債務超過解消の兆しなく

alt
洋菓子のヒロタ エチカ表参道店

洋菓子のヒロタを運営する21LADY<3346>が上場廃止の瀬戸際まで追い込まれました。2020年3月期に債務超過に転落し、2022年3月末までにこれを解消しなければ上場廃止となりますが、今のところその目途はたっていません。2022年3月期は700万円の純利益を見込んでいました。しかし、製造原価高騰によって損失へと一転。5,900万円の最終赤字を見込んでいます。同社は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた特例に基づき、上場廃止猶予期間を1年から2年に延長されていました。それでも債務超過解消に向けた資本増強には動いていません。上場廃止のカウントダウンが始まりました。

この記事では以下の情報が得られます。

・21LADYの業績
債務超過解消に向けた取り組み

広野道子氏退任後に求心力を失う

21LADYは2000年3月創業。投資育成事業を行っており、2001年10月に経営破綻した洋菓子のヒロタの再生支援スポンサーに名乗り出ました。当時の21LADY代表取締役社長だった広野道子氏が旗振り役を務め、不採算と言われていた直営店のリニューアルとリブランディングに着手。商品点数を150から60に絞り込むなど戦略を練り直して6カ月後に黒字化を達成しました。

広野道子氏は飲食店のFCチェーン開発を行っていたベンチャー・リンク出身。その後、経営コンサルティングに携わるようになりました。1997年5月にポッカクリエイト専務取締役を務めています。21LADYを創業してヒロタの代表取締役や、2010年3月に伊藤忠商事<8001>から譲受した北欧インテリアのイルムスジャパン(目黒区)の代表取締役社長に就任しています。しかし、2018年6月の株主総会で広野氏は解任されました。理由は業績不振が続いていたこと。しかし、社長退任で会社はむしろ推進力を失ったように見えます。2017年3月期はわずかに利益を出しましたが、社長退任後は一度も経常利益を出していません。

■21LADY業績推移(単位:百万円)

2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期
予想
売上高 2,736 2,557 2,519 1,930 1,966 2,245
前期比 91.7% 93.5% 98.5% 76.6% 101.9% 114.2%
経常利益 22 -2 -145 -155 -141 -33
純資産額 29 55 240 -167 -368 -

有価証券報告書より筆者作成

洋菓子のヒロタは不採算店の撤退ではなく、リニューアルによって復活を遂げました。しかし、一時的に業績は回復したものの、長くは続かずに閉店のテコ入れへと駒を進めます。撤退を推進したのも広野氏でした。50以上あった店舗は2018年3月末時点で18まで減少します。その成果が2017年3月期の2,200万円という経常利益でした。赤字体質から脱却できたのです。

しかし、解任後も出店の反転攻勢には出られず、新型コロナウイルス感染拡大の影響も重なって2021年3月末時点で直営店は6店舗を残すのみとなりました。

債務超過解消に向けた動きが見えず

21LADYは2014年3月期にもヒロタの原価高騰、大雪による物流遅延などによって純損失5,800万円を計上し、2,300万円の債務超過へと転落しています。その年の12月にヒロタが保有していた千葉工場を売却して財務体質の改善を図るなど、上場廃止に向けた取り組みを早期に着手していました。翌年の2015年3月期に債務超過を解消し、上場廃止危機を乗り越えました。これを主導したのも広野氏です。

今の21LADYには債務超過解消に向けた取り組みが見えてきません。

現在、洋菓子のヒロタ、あわ家惣兵衛、トリアノン洋菓子店の3つを主力事業としています。販路拡大やオンラインショップの拡充、キャンペーンの実施などによって業績を回復するとしています。

21LADYは2022年3月期において5,900万円の純損失を予想しています。2021年9月末の段階で債務超過額は3月の3億6,800万円から4億800万円に膨らんでいます。業績の回復よりも資本増強が急務です。

債務超過に転落した年の2020年10月、21LADYはトリアノン洋菓子店(東京都杉並区)を買収しました。トリアノン洋菓子店は2020年7月に200万円の営業損失を計上しており、買収後の2021年3月期に1,400万円の営業損失を出しています。純資産1,600万円の会社の買収に仲介手数料などの諸経費3,600万円が発生しました。

債務超過に陥り、新型コロナウイルス感染拡大が小売店に深刻な影響を与える中での買収でした。21LADYはやや迷走している印象を拭えません。上場廃止となるのか、最大の山場を乗り越えるのか。注目が集まります。

麦とホップ@ビールを飲む理由