​2020年第1四半期 TOBプレミアム分析レポート

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1.2020年第1四半期のTOB総評

◆TOB件数は15件(前年同期と同じ)、買付総額は1兆5722億9800万円(前年同期は2893億8500万円)だった。(表1)

◆このうちMBO件数は全体の33.3%に当たる5件だった。(表2)

◆注目されたTOBは前田建設工業<1824>が子会社の前田総合インフラ(東京都千代田区)を通じて前田道路<1883>を敵対的TOBで子会社化した案件(成立)と、旧村上ファンド系投資ファンドののシティインデックスイレブンスが芝浦機械(旧・東芝機械)に仕掛けた敵対的TOB(不成立)の2件。(表3)

◆TOB買付総額のトップは昭和電工<4004>が子会社のHCホールディングス(東京都港区)を通じて日立化成<4217>を子会社化した8445億7000万円。2位は日立製作所<6501>が子会社の日立ハイテク<8036>を完全子会社化した4271億1600万円。3位は前田建設工業が前田道路を子会社化した861億5500万円だった。

◆総プレミアム平均は31.40%(前年同期31.45%)、ポジティブプレミアム平均は34.16%(同35.40%)だった(表4)。50%を超えるプレミアムのTOBは三菱ガス化学<4182>による日本ユピカ<7891>のTOB(117.86%)と、前田建設工業による前田道路のTOB(54.54%)の2件(前年同期と同じ)。(表5)

2-1.TOB件数の推移

◆表1 TOB件数の推移(届出ベース、公開買付開始日が2020年1月1日~3月30日 非上場および不成立案件含む)

2-2.MBO件数の推移

◆表2 MBO件数の推移(届出ベース、非上場および不成立案件含む)

3.2020年第1四半期の主なTOB

◆表3 話題となったTOB(買収プレミアムは3カ月平均株価で算出)

対象企業名 買付者 プレミアム 成否
前田道路 前田総合インフラ 54.54% 成立

前田道路は前田建設工業の持ち分法適用関連会社(出資比率24.68%)だった。2020年1月20日に前田建設工業がいきなりTOBを発表。これに対して前田道路は反対意見を表明し、前田建設工業が保有する全株式を自己株取得して同社との資本関係の解消を提案する書面を送付した。前田道路は対抗策として、手元資金の約6割に当たる535億円の特別配当や同業最大手のNIPPO<1881>との資本業務提携の協議入りなどで前田建設工業を牽制。応募期限が迫った3月上旬に前田道路がインフラ運営事業での協業検討を提案するなど歩み寄ったがTOBは継続。2020年3月12日に応募数は3621万株と買い付けの上限(2181万1300株)を上回り、TOBは成立。前田建設工業の出資比率は51%となり、連結子会社に。買付総額は861億5500万円。

対象企業名 買付者 プレミアム 成否
東芝機械 シティインデックスイレブンス 不成立

旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが芝浦機械(4月1日に東芝機械から社名変更)に対して約259億円を投じて芝浦機械株の約44%の取得を目指してTOBを開始。旧東芝機械が3月27日に開催した臨時株主総会で旧村上ファンド側の持ち株比率を引き下げる買収防衛策の導入が承認されたため、4月2日にシティインデックスイレブンスが撤退を表明した。買付価格は1株3456円だったが、芝浦機械の株価がTOB発表時の3300円台から新型コロナウイルスの感染拡大の影響などで2000円前後まで下落。市場価格と買付価格との乖離が拡大し「高値づかみ」の構図となっていたこともTOB撤回の判断につながったとみられる。

4.買収プレミアム(TOB)の推移

◆表4 買収プレミアムの推移(非上場および不成立案件を除く)

総プレミアム平均 ポジティブプレミアム平均*
2014年 25.40% 36.70%
2015年 29.20% 39.90%
2016年 26.36% 40.85%
2017年 23.32% 34.90%
2018年 26.65% 35.76%
2019年 32.64% 35.05%
2020年1Q 31.40% 34.16%

*ポジティブプレミアム平均は、ディスカウントTOBを除く

5.買収プレミアム(TOB)の分布水準

◆表5 TOBプレミアムの構成比(非上場および不成立案件を除く)

【ご利用上の注意】

※2020年1月1日から2020年3月31日に公開買付が開始された案件を集計対象としている。ただし自社株TOBは対象外である。
※プレミアム算定に採用している株価は特に断りがない限り、公表日前3カ月平均株価(終値)としている。
※プレミアム算定に非上場企業、不成立、公開買付中の案件は含まれない。

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データ・文:M&A Online編集部