モノ消費からコト消費へ 2017年注目のVR関連銘柄

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 1月2日、百貨店各社は2017年の初売りを開始した。今年の目玉は「体験型福袋」だ。消費の潮流がモノからコトへとシフトしていることを象徴する。

 松屋の銀座店では2日から、「銀座×築地こだわり福袋」を売り出した。築地市場見学、築地魚河岸での食事や中華料理店のペアランチ、銀座のバーでのペアカクテルなど盛りだくさんの内容だ。価格は3万2400円。このほか、菜園料理家の出張料理教室付きの料理道具セット(6万4800円)や、挙式やウエディングドレス、料理がセットになったプレミアムウェディング福袋(88万円)などユニークな体験型福袋が目白押しだ。

 近鉄百貨店では、伊勢志摩サミットを体験できる福袋が初登場した。2016年に開催された伊勢志摩サミットで各国首脳が宿泊した「伊勢志摩ホテル ザクラシック」の部屋に宿泊し、首脳に提供したメニューと同じイメージの料理を堪能、記念写真の撮影も付く。価格は20万1700円。すでに販売を始めており、1月3日まで応募できる。

 百貨店ではないがこんな変わり種福袋も。東京都品川区のしながわ水族館は、10分の1の確率でイルカトレーナー体験のチケットが当たる福袋を2日から売り出した。

 各社が体験型福袋に力を入れるのは、モノが売れにくくなっていることの裏返しでもある。個人所得の低迷で節約志向が高まっていることに加え、フリーマーケットアプリを通じた中古品の個人間売買、シェアリングエコノミーと呼ばれる複数の人でモノを共有するサービスが台頭し、モノを買う必要性が薄れているのだ。

 こうした中、体験はモノと違い、在庫として持ち運ぶことができないため、モノへの執着の薄い若年層でも購買意欲をそそりやすい。加えてフェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及で、写真を投稿、共有する文化が若年層を中心に広がっていることもコト消費の拡大を後押ししている。

 こうした消費トレンドの変化は、M&Aにも少なからぬ影響を与えることになるだろう。テーマパークやゲームセンターなどの体験型施設に加えて、今年特に注目されるのは仮想空間を現実世界で体感するバーチャル・リアリティー(仮想現実)だ。

VRで注目される銘柄は

 2016年には位置情報を使ったゲーム「ポケモンGO」が大流行。人々はスマートフォンを片手に公園や街に繰り出した。そしてVRを使ったゲーム機「プレイステーションVR」をソニーが発売するなど「VR元年」とも呼ばれた。2017年はVRが最先端を行く一部の人だけでなく、ゲームを中心に幅広い消費やビジネスの現場への応用が進むのではないかと予想する。

 そこでVR関連の事業や技術を持つ銘柄を以下にピックアップしてみた。

・グリー・アドアーズ、VRの体験施設

グリーは2015年11月に「GREE VR Studio」を立ち上げるなど、VRにおける自社開発体制を強化してきた。首都圏を中心にアミューズメント施設を運営するアドアーズと組み、アドアーズが東京・渋谷で運営する店舗を改装し、VR専門のアミューズメント施設「VR PARK TOKYO]を2016年12月に開業した。料金は70分遊び放題で1人3300円(2人以上の場合2900円)。一時的な体験としてしか提供されていなかったVR体験を、誰でも気軽に楽しむことができる「遊び」へと昇華させていく考えだ。

・カルチュア・コンビニエンス・クラブ、VR機器のレンタル

傘下のTSUTAYA馬事公苑店にてVRコンテンツの無料体験と手頃な価格でVR機器のレンタルを行う実験を昨年12月27日から開始した。個人所有のハードルが高いVR機器を一泊1,000円からの低価格でレンタルする。実験結果を踏まえ、全国のTSUTAYAの店舗での展開を検討していく。

・ネクスト、VRで家づくり

おもちゃのブロックでつくった間取りによる3Dの家をつくり、バーチャル空間を体験できる「GRID VRICK(グリッドブリック)」を2016年4月に発売した。リアルタイムで3Dの家を作り出し、間取りを自由に変更することができる。新築分譲マンションのモデルルームの3D体験できるスマートフォン用VRゴーグルも提供する。

・メガネスーパー、VRから眼を守るウエアラブル

視覚拡張をコンセプトにしたメガネ型ウエアラブル端末のプロトタイプ商品を開発した。1月18日~20日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「ウェアラブルEXPO」に出展する。VRの普及で眼への負担が大きくなるなかで、眼の健康を守りながら、VRなどの最新技術を活用できる環境の提供をめざす。

・クリーク・アンド・リバー社、VRの転職サービス

2016年8月にVRに対応した高性能で軽量なヘッドマウントディスプレーを製造する中国のアイデアレンズ社と共同出資で新会社「VR Japan」を設立。VR関連の求人情報を紹介する転職スカウトサービスも始めた。

 ここに取り上げた銘柄以外にも今年は様々な企業のVR市場への参入が見込まれそうだ。自前での開発だけでなく、VR関連の技術やサービスの獲得を狙ったM&Aも活発になるに違いない。

M&A Online編集部