新型コロナ感染、実は「年内に第6波が来ない」が最も危ない

alt
新規感染者の激減でワクチン接種会場も閑古鳥(写真はイメージ)

過去最大の感染爆発を起こした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第5波が急速に収束している。専門家も「なぜ、ここまで急速に減少したのか分からない」と首をひねる。日本はこのまま平穏な年越しを迎えられるのだろうか?仮にそうなったとしたら、実は最も恐ろしい事態を招くかも知れない。

最も怖いのは年明けからの感染爆発

2021年10月24日の東京都での新規感染者は19人。1日当たりの感染者数としては今年最少で、20人を下回るのは昨年6月17日の16人以来だ。1週間前の日曜日よりも21人減り、24日までの1週間平均は31.3人で前週の51.8%とほぼ半減した。

東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県では、飲食店の営業時間短縮や酒類の提供禁止といった感染防止要請を25日から解除する。これにより沖縄県を除くほぼ全国でコロナ規制が撤廃され、生活や経済はほぼ平時体制に戻ることになった。

これから1〜2週間後に感染者が急増すれば、規制が復活することになる。日本経済は再び打撃を受けることになる。だが、本当に深刻なのは、コロナ規制を緩和して人流が増えたにもかかわらず、感染拡大が起こらなかった場合だろう。もちろん、そのまま感染者が増えることなく終息すればベストな結末である。

しかし、年末までは無事で、年明けから来春にかけて感染が再拡大するようなことがあれば、第5波を超える感染爆発と死亡者の急増が想定される。なぜか?

規制緩和後に年末まで感染拡大が起こらなければ、社会全体に「もうコロナ禍は終息した」との認識が広がるだろう。そうなると3回目のワクチン接種、いわゆる「ブースター接種」を受ける人が激減する可能性がある。

とりわけ、ブースター接種が必要とされる高齢者が「わざわざ3回目の接種を受ける必要はないだろう」と考えるようになりそうだ。気温が低下して出歩くのも億劫になるし、かつての接種で副反応が出た人が「感染拡大も収まっているのに。わざわざ辛い思いをしてまで3度目のワクチン接種を受ける必要はない」と考えても不思議はない。

2度のワクチン接種率足踏みが最大の懸念材料

コロナワクチンを2度接種したにもかかわらず感染する「ブレークスルー感染」が起こっているのは事実だが、その場合もワクチン接種が完了していれば比較的軽症で済む可能性が高いことは分かっている。しかし、自身は軽症で済んでもウイルスを撒き散らすことには変わりない。

一方、ワクチン未接種者もコロナ感染が終息したと感じれば、わざわざ接種しようとは考えないだろう。その結果、ブースター接種をしなかった高齢者が、未接種の高齢者と接触した場合、過去の感染拡大よりも深刻な被害をもたらしかねない。

年齢別では接種率が低い若年層も同様だ。現在、主流となっているデルタ株は健康な若年層でも、重症化リスクが高いことが分かっている。「コロナ禍は終息した」と思い込み、実際にはそうでなかった時の揺り返しは相当激しいものになるだろう。

ブースター接種には未知の部分も多い。ワクチンなどによる抗体の減少には個人差があり、抗体とは別の細胞性免疫もワクチン同様に半年で効果が下がるかどうかも分かってはいない。なので、現時点で最大のリスクはブースター接種の有無ではなく、2度のワクチン接種率が頭打ちになることだ。こちらの危険性は、第5波で明らかになった。

実際、ワクチン接種が進んだ欧米で続いている感染拡大はワクチン未接種者によるものだ。2度のワクチン接種をした人が軽症で済むから、仮に第6波が到来しても過去の感染拡大に比べれば影響は少ないとの見方もある。

だが、コロナ感染者が増えれば、これまで通り一般医療にもしわ寄せが来るのは間違いない。国民の健康福祉全体を考えれば、重要な問題は残ったままなのだ。さらに軽症であれ感染者が出続ければ、新たな変異株発生にもつながりかねない。コロナ禍の緊張感が緩むのをどう防ぐのかが、今後のコロナ対策の重要なテーマになるだろう。

文・M&A Online編集部