台湾問題は中国企業のM&Aにどう影響するか−松田康博東京大学教授

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地政学的なリスクから「中国への投資は慎重に」と話す松田康博東京大学教授

中国に独立派と見られている民進党の頼清徳氏が新たな台湾総統に選ばれた。中台の軍事的緊張が米中日の3国関係にも影響を与えるのは避けられない。日本企業は中国に多くの合弁企業を置いている。中国との摩擦が激化する中、現地での事業やM&Aにどのような影響があるのか?

東京大学東洋文化研究所の松田康博教授は、日本企業によるM&Aなどの対中投資について「慎重にならざるを得ないのではないか」と見ている。

日本記者クラブの会見で、M&A Onlineの質問に答えた。松田教授は「かつて台湾企業は天安門事件で中国と欧米諸国の関係がギクシャクした時代に中国へ進出してビジネスを伸ばした。しかし、最近は米中対立の激化に伴い、中国工場で生産した製品や部品を北米へ輸出しにくい状況になっている」と、米国が経済安全保障の観点でサプライチェーン(部品供給網)から中国を外す動きが強まっていることに注目。

台湾問題が先鋭化して対米貿易が縮小すれば「中国市場は過当競争になり、儲からなくなる外資系企業も増えるだろう。さらには中国当局に身柄を拘束されるリスクもある。よくよく考えて中国とのビジネスを検討すべきだ」と警鐘を鳴らす。

今年の米大統領選挙でトランプ前大統領が返り咲いた場合の台湾戦略の転換については、「すでに対中関税を一律60%に引き上げると明言しており、ディール(取引)の一環として中国には厳しく当たるだろう。一方で台湾や日本に、中国との対抗上、米国製の兵器をもっと購入するよう圧力をかけてくるかもしれない」と見る。

今後の中台問題については「中国にとって台湾を武力統一するコストとリスクは大きい。台湾側が軍事的な防衛を怠らない限り、武力衝突の可能性は低い。緊張が恒常化したダイナミックな現状維持の状態が続くのではないか」と予測している。

文:M&A Online

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