司法試験の論文式はアウトプットで「三段論法」を意識する

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司法試験の論文式試験について|弁護士になるための勉強法4

司法試験で、昔から多くの受験生が苦しんできたのが「論文式試験」です。主要3科目の合計7問を1問について2時間、選択科目の1問3時間を3日にかけて実施する長丁場の試験で、集中力と体力も要求されます。

筆者は合格率が3%程度であった旧司法試験に、大学4年の在籍時に短期合格しています(試験制度は変わりましたが、今でも司法試験合格に必要な要素は根本的には変わっていないと思います)。

そこで今回は、短期合格のためには不可欠な「論文式試験」への対処方法や効果的な勉強方法をご紹介していきます。

1.論文式試験の概要

司法試験は、毎年5月中旬頃に4日間かけて実施されます。論文式試験は、そのうち前半の3日間に行われます。

科目は以下の通りです。

・公法系(憲法と行政法) 計2問 それぞれ2時間
・民事系(民法と民事訴訟法)計3問 それぞれ2時間
・刑事系(刑法と刑事訴訟法)計2問 それぞれ2時間
・選択科目(1科目)3時間

選択科目については、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の中から1科目を選びます。

上記を合計すると、試験時間だけでも17時間に及びます。これを3日にかけて連続して実施するので、受験生の方にも相当な疲れが出ます。しかしその後に「短答式試験」を控えているので、体力を使い切ることはできません。

論文式試験を克服しない限り司法試験の合格は見えてこないので、勉強の際にも重点的に取り組んで対策を練る必要があります。

2.論文式試験の基本的な勉強方法

論文式試験の合格を勝ち取るには、どのように勉強をすれば良いのでしょうか?

基本のコツ1.過去問で試験の傾向を把握する

まずは、試験の傾向を把握することが大切です。最近の論文式試験では、問題文が長文化しているので、「どのようなことを聞かれているのか」という出題意図を読みとくのが難しくなっています。しかし聞かれてもいない話を一生懸命に論述しても、合格からは遠のくばかりです。

出題意図を読み取る能力を身に付けるには、過去問を何度も解き続けることをお勧めします。過去問には自然と出題傾向が現れるので、慣れておけば自然と本番でも出題意図をつかみやすくなります。予備校の答練も悪くはありませんが、やはり本試験のクオリティには及ばないため、基本的には過去問を重視しましょう。

・平成30年度版 論文式本試験 ぶんせき本

論文本試験科目別・A答案再現ぶんせき本
答練より過去問を重視すること

基本のコツ2.三段論法を意識する

答案練習をするときには「三段論法」を意識して、論理的な文章を心がけましょう。問題提起、規範定立、あてはめの作業を確実にできている答案は意外と少ないので、きっちり論証ができる方は早めに合格を勝ち取りやすくなります。

論理的な文章を書くには「答案構成」をしっかりすることが重要です。構成の段階で「定義」「問題提起」→「理由づけ」→「規範定立」→「あてはめ」の具体的流れを書き込んでいれば、いざ文章化する際にもスムーズに論証できるでしょう。

あとは、自分の書いた答案と模範答案などを読み比べることです。模範答案はしっかり論証できているはずなので、それと比べることで自分の答案に足りない部分が見えてきます。

基本のコツ3.インプットよりアウトプット

論文式試験に合格するには、反復継続したアウトプットが不可欠です。基本書やテキストによってインプットをするのも良いのですが、それだけでは合格ラインには行き着けません。必ず何度も過去問や答練を繰り返し解き続け「2時間で1答案を仕上げる」作業に慣れていきましょう。

次に、公法系、民事系、刑事系の勉強法についてお伝えします。

3.公法系は「完璧に論証」できるように

公法系の論文式試験では、憲法と行政法の分野から出題されます。これらの科目は2つとも、民法などの他の科目と比べて勉強範囲は狭くなっています。憲法は条文の数も少なく出題されるテーマが決まっていますし、行政法も基本的な論点を理解していれば解ける問題が出題されます。

勉強法としては、やはり過去問を重視すべきです。本試験のみならず予備試験のものも含め、過去の論文式試験の問題を何度も解いて解説を読み込み、完璧に論証できるようにしておきましょう。百選などの重要な判例も頭に入れておくと良いです。

・司法試験論文全過去問集〈1〉公法系憲法

司法試験論文全過去問集〈1〉公法系憲法


4.民事系は「重要な条文を把握」する

民事系科目は条文数も多く、勉強の範囲が広くなります。じっくり時間をかけて、確実に自分のものにしていきましょう。過去問を中心とした勉強を行いますが、重要な条文の把握も必要です。

短答式のような細かい知識は不要ですが、重要論点では各説の内容と論理的な帰結、判例などをしっかり押さえましょう。

・司法試験論文全過去問題集〈3〉民事系民法

司法試験論文全過去問題集民事系民法


5.刑事系は「論理構成力」が問われる

刑事系の論文試験では、論理構成力をかなり問われます。特に刑法では構成要件、違法性、故意、中止犯などの各説の対立があり、論理的に組み立てていかないと矛盾を起こしてしまう可能性もあります。

まずは自説の立場を定め、その説からどういった結論が導かれるのか、しっかり理解しましょう。解説の丸暗記ではなく、なぜその結論となるのか「理解」が要求されます。

アウトプットをしたら解説を読んで理解するインプット、また次に答練でアウトプットという作業を繰り返し、力をつけていきましょう。利用する問題集は、基本的に過去問でOKです。

・司法試験論文全過去問題集〈6〉刑事系刑法

司法試験論文全過去問題集〈6〉刑事系刑法


選択科目については、それぞれ過去問演習をしつつ答案練習などを受けてアウトプット力を高めていきましょう。

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司法試験では論文でも択一でも「過去問」が非常に重要です。また本試験では「体力」も必要とされるので、適度に身体を動かしつつ、過去問と答練の繰り返しによって合格への道のりを進んでいってください。

文:福谷 陽子(法律ライター)