「スタートアップ買収の実務」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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スタートアップ買収の実務-成功するオープンイノベーションのための戦略投資- 増島雅和・飯島隆博・岡野貴明 ・SMBC日興証券編著、日経BP・日本経済新聞出版刊

日本の産業競争力を高める特効薬として期待されている「オープンイノベーション」。その手法の一つがスタートアップ企業のM&Aだ。しかし、日本ではスタートアップの目指す「ゴール」は新規上場(IPO)が主流で、M&Aはまだまだ少ない。なぜ日本でスタートアップM&Aが少ないのかを分析し、買収の実務について解説した「スタートアップM&A」の指南書だ。

スタートアップ買収の実務

本書ではスタートアップの買収を仕かける大手企業担当者を読者と想定した内容。そのためスタートアップを理解するところから始めている。日本では「スタートアップ=新興中小企業」のイメージが強いからだ。

実は両者は全くの別物。中小企業は現在取り組んでいる事業を物理的に拡大することで成長するが、スタートアップはビジネスモデルの構築や研究開発で指数関数的な急成長を目指す。

具体的な事例としてラーメン店を挙げ、直営店を増やしていくのが中小企業、ブランドや店舗のフォーマット、運営マニュアル、仕入先開拓などのサービスを提供しフランチャイズで店舗を展開するのがスタートアップだ。

そもそもスタートアップの出口の約9割がM&Aの米国と比べて日本が3割程度に留まっているのは、日本の株式市場が上場しやすいのに加えて、大手企業がM&Aを「経営支援」と捉える「上から目線」が足を引っ張っているという。

確かにスタートアップは資金調達力が乏しく、大手企業や投資家からの資金調達が成長には欠かせない。一方でスタートアップは身軽で、試行錯誤がしやすく、既存事業との整合性を配慮する必要がないなど、イノベーションを起こすには最適の企業形態といえる。

ところが往々にして大手企業はキャッシュフローがあり仕組みによって運営されていることを良しとする視点からスタートアップM&Aを実施しようとするので、優れたイノベーションを起こす可能性があるスタートアップを「対象外」と見逃すことがありうるのだ。

世界知的所有権機関(WIPO)の「グローバルイノベーション指数(GII)」2022年版によると、日本のイノベーションランキングは13位と、アジアでも韓国や中国に追い抜かれている。こうした事態を解消するためにも、オープンイノベーションが必須だという。

スタートアップを買収することで大手企業が革新的なイノベーションを取り込むのが、オープンイノベーションの王道。そのための買収価格の算定や手続き、法律、税制、注意点などをコンパクトにまとめており、大手企業のスタートアップM&Aの担当者には必読の1冊だ。(2023年8月発売)

文:M&A Online